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研究活動

セミナー詳細

2017年01月05日

社会的評価による運動技能学習の促進

日 時 2017年01月05日(木) 14:45 より 15:45 まで
講演者 菅原 翔 日本学術振興会特別研究員
講演者所属 早稲田大学基幹理工学術院
場 所 生理学研究所(明大寺地区)1F大会議室
お問い合わせ先 定藤規弘(心理生理学 内線7841)
要旨

  新しく何かを始める時、私達は新たに複数の運動技能を習得する必要がある。もっと容易かつ早く当該技能を習得する方法があるならば、私達は生涯でより多くのことを達成できるかもしれない。運動技能を習得する上で、経験した技能を忘れずに定着させることは極めて重要である。金銭報酬などのフィードバックにより運動技能定着が促進されるという現象が、複数の研究により報告されている。特に、我々は「褒められる」という社会的評価が運動技能定着を促進することを発見した。しかし、社会的評価と運動技能定着を結びつける神経学的機序は分かっていない。この問題を解決するには、運動技能定着と社会的評価を支える神経基盤の解明が不可欠である。そのため、運動技能学習と社会的評価の処理を支える神経基盤を、機能的磁気共鳴画像を用いた一連の研究により検討してきた。運動技能学習の神経基盤としては、線条体や小脳という皮質下領域が系列運動学習の獲得と定着過程に関与することに加え、学習の痕跡が早期段階から一次運動野を中心とする皮質ネットワークで保持されることを明らかとした。社会的評価の神経基盤に関しては、肯定的評価と否定的評価の処理に関係する脳領域だけでなく、社会的評価に対する感受性が楔前部の活動と関連することを示した。
  今回の発表では、これまでの研究成果を総括するとともに、これらの知見に基づく展望と現在進行形の取り組みについて紹介したい。