日 時 | 2017年07月26日(水) 17:00 より 18:00 まで |
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講演者 | 野田 貴大 先生 |
講演者所属 | Institute of Neuroscience, Technical University Munich |
場 所 | 生理学研究所(明大寺地区)1Fセミナー室AB |
お問い合わせ先 | 鳴島 円(生体恒常性発達研究部門 narumado@nips.ac.jp) |
要旨 |
音の知覚情報処理に関わる聴覚皮質は、トノトピー(周波数マップ)構造をもつが、神経集団から局所回路にいたる様々なスケールで、異なる階層の情報処理を担うと考えられる。しかし、各スケールで処理される情報と、スケール間の情報の相互連絡について、体系的なことはほとんど分かっていない。本研究は、まず大域スケールで、げっ歯類の音脈分凝現象をモデルに神経集団間の機能ネットワークを、次に、局所スケールで見られるトノトピーの特異的な構造を、そして、スケール間のトノトピー構造の幾何学関係を、それぞれ調べた。その結果、大域的な神経集団の活動では、神経振動の位相が音脈分凝現象と相関し、音脈分凝の生起条件で位相情報にもとづく機能ネットワークが出現することを示した。一方、局所的なトノトピー構造(局所トノトピー)は、これまで不均一な分布が報告されていたが、皮質全層の2光子カルシウムイメージングを通じて、局所トノトピーに不均一性と均一性が共存することを示した。さらに、局所トノトピーと大域的なトノトピーとの間の見かけ上の構造的な乖離が幾何学的に結びつく可能性を示した。以上の結果をもとに、聴覚皮質の異なるスケールにおける情報処理の違いと、局所スケールの機能構造で処理された音情報が大域的な神経集団の担う音情報に統合される過程を考察する。 |