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2017年09月20日

条件刺激ー報酬間関係のアップデートにおける前頭前野眼窩部(orbitofrontal cortex)の因果的役割

日 時 2017年09月20日(水) 11:00 より 12:00 まで
講演者 小川正晃 先生
講演者所属 京都大学大学院医学研究科・神経生物学分野
場 所 山手2号館 2階セミナー室
お問い合わせ先 川口 泰雄(大脳神経回路論 yasuo@nips.ac.jp)
要旨

 いわゆる古典的報酬条件づけでは、動物に対し、学習前には無意味な物理的刺激(条件刺激)と報酬が一定の時間的関係で繰り返し提示される。前頭連合野(前頭前野)の一領域である眼窩部(Orbitofrontal cortex: OFC)は、このような刺激と報酬間関係の学習の結果を、状況に応じて適切にアップデートし、未来の適応行動に活かす領域であると考えられる。しかし、従来の技術的な限界から、条件刺激提示や報酬を予測する秒単位の時間のOFC神経細胞活動が、未来の適応行動をどのように制御するのか、すなわちその因果的役割は未解明である。つまり、OFCの正確な役割は突き止められていない。
 そこで我々は、マウスにおいて、秒単位で可逆的に神経活動を抑制する光遺伝学法を用いて、条件刺激2つと報酬の有無の関係が逆転する学習課題におけるOFCの因果的役割について検討した。特に、逆転時に、以前は報酬と条件づけされていた刺激提示後に報酬が提示されない秒単位の時間のOFCの役割に着目した。このタイミングに光を照射してOFCの活動を抑制すると、その条件刺激に対する反応行動の低下(消去学習)が遅延した。らに興味深いことさに、その次に、以前は無報酬と条件づけされていた刺激後に新たに報酬が提示されるが、その条件刺激に対する行動増加も遅延した。また、OFC領域の一部の細胞特異的に抑制を行うと、この効果が逆になった。以上より、OFCは、過去の刺激—報酬有無間の学習記憶を利用して、現在の条件刺激の意味合いを適切にアップデートすることに因果的に関わることが示された。