日 時 | 2017年09月20日(水) 11:00 より 11:50 まで |
---|---|
講演者 | 堀内 浩 |
講演者所属 | 生理学研究所生体恒常性発達研究部門 NIPSリサーチフェロー |
場 所 | 生理学研究所(明大寺地区)1Fセミナー室AB |
お問い合わせ先 | 鍋倉淳一(生体恒常性発達研究部門) |
要旨 |
正常な脳活動を維持するための神経回路恒常性は、生体の免疫状態が大きく関わっていることがわかってきた。このような背景から、生体の免疫機能を基軸とした恒常性のメカニズムについて研究してきた。講演者らは、網羅的な探索から、ミクログリアの活性化刺激によって最も発現増加する遺伝子が抗炎症性サイトカインIL-10ファミリーであるInterleukin-19 (IL-19)であることを見いだし、IL-19が自己抑制制御因子として機能していることを明らかにした (Horiuchi et al, 2015)。この免疫状態の異常が中枢神経系に及ぼす影響を検討するために、末梢免疫細胞が髄鞘に対して自己免疫異常を示す多発性硬化症のモデルマウス(EAE)を用いてIL-19の機能を調べた。脾臓、脊髄において発症前に発現増加し、発症時には正常レベルまで低下することがわかった。IL-19欠損によってEAEの早期発症と病態悪化と脊髄への浸潤細胞の増加が認められた。同モデルの発症/増悪化には、IL-17A産生ヘルパーT細胞 (Th17) が必要であると考えられている。興味深いことに、IL-19欠損は末梢組織および脊髄内のTh17細胞の増加を示した。IL-19欠損が脾臓由来のマクロファージにおいてTh17分化に必須なIL-6, TGFβ, IL-23ならびに抗原提示に必要なHMCIIの発現増加が認められた。したがって、IL-19はマクロファージの抗原提示能を制御することでTh17細胞への分化を抑制し、この抑制機構の破綻がミクログリアあるいは浸潤したマクロファージによる神経炎症を増悪する可能性が新たに示唆された(Horiuchi et al, in preparation)。本セミナーでは、現在取り組んでいるミクログリアによる神経回路活動修飾機構について合わせて紹介したい。 |