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セミナー詳細

2017年10月16日

ヒトの知識獲得における選択性とその神経基盤

日 時 2017年10月16日(月) 16:00 より 17:00 まで
講演者 倉重宏樹 特任研究員
講演者所属 電気通信大学情報理工学研究科 情報・ネットワーク専攻
場 所 生理研4階462号室(心理生理学研究部門内カンファレンスルーム)
お問い合わせ先 定藤規弘(心理生理学研究部門)
要旨

ヒトは知識獲得において,外界から単に受動的に情報を受け取るのではなく,むしろ能動的に情報を選択することを行っている。これまでの認知神経科学や心理学の研究により,知識獲得の選択性を規定する因子が徐々に明らかになりつつある。これらの研究から知識獲得は何らかの合目的的な過程であることが示唆される。しかしながら,知識獲得の選択性が知識のどのような機能の増進に寄与しているかは不明である。また知識獲得の選択性を生じる神経基盤が何かも明らかになっていない。本講演ではまず,ヒトは自らの創造的生産性を高めるように選択的に知識獲得をしているという仮説を検証した研究を紹介する。実験は被験者に新規四文字熟語を覚えさせるものであり,さらに時間制限のもとでその語を主題とした論述文を書かせ,その長さによってその語が与える創造的生産性を測った。一連の実験および解析により,被験者は高い創造的生産性につながる語を選択的に覚えていたことがわかった。さらに,知識獲得の神経基盤を調べた研究についても紹介する。これはげっ歯類で見られているpreplay現象に着想を得たものである。連続する二日間のfMRI実験で,被験者は,単独では意味が理解しづらいが,組になることで容易に意味がわかる前半文・後半文の対についての文把握課題を課された。後半文提示前の安静時fMRIに後半文神経表現に類似したボクセルパターンが見出される程度と,後半文の理解度を比較した結果,対応する前半文が前に提示されたものについて,正の相関関係が見られた。このことから,既存知識に基づいて,経験に先立ってプロトタイプ的な神経表現が脳内に準備されることが,その神経表現に対応する知識の獲得を増進することを示した。