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セミナー詳細

2017年11月10日

環境ストレスから恒常性と生命を守る脳の神経回路メカニズム

日 時 2017年11月10日(金) 16:00
講演者 中村和弘 先生
講演者所属 名古屋大学 大学院医学系研究科 統合生理学分野
場 所 山手3号館2階西 大会議室
お問い合わせ先 富永真琴(細胞生理研究部門)
冨田拓郎、西村明幸(心循環シグナル研究部門)
要旨

環境には、暑熱、寒冷、感染、天敵、飢餓など、様々な環境ストレスが存在し、脳はこうしたストレスから生体の恒常性と生命を守るために自律性の調節を行う。私達は、生理学や神経解剖学、光遺伝学などを組み合わせた多角的解析によって、環境ストレスから生命を守る中枢神経回路メカニズムの解明を進めてきた。例えば、皮膚で感知した環境温度変化の情報を視床下部の体温調節中枢(視索前野)へ伝達し、そこから体温調節の指令を末梢へ伝達することで深部体温を守る一連の中枢神経回路を明らかにした。さらに、感染時に病原体への抵抗力を高める発熱の惹起にこの神経回路が関わることを見出した。また、天敵に対峙した時などには、その心理ストレスによって脈拍、体温、血圧が上昇するが、こうした交感神経反応を駆動する視床下部-延髄間の神経伝達路を同定し、現在、上流のストレス信号伝達路を解明しつつある。さらに、飢餓時にエネルギー消費を節約して摂餌行動を促進する、飢餓を生き長らえるための飢餓反応を指令する神経回路を明らかにした。私達が解明した、多様な環境ストレスから恒常性と生命を守る中枢神経回路メカニズムは、人間を含めた哺乳類の生命機能の根幹をなすシステムであり、生活習慣病やストレス疾患などの発症機序の解明に大きく貢献すると考えている。