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研究活動

セミナー詳細

2017年12月25日

超高圧電子顕微鏡、SBF-SEM、低温電子顕微鏡による生体試料の形態および構造解析

日 時 2017年12月25日(月) 13:30 より 14:30 まで
講演者 ソン チホン
講演者所属 生理学研究所脳機能計測・支援センター形態情報解析室 研究員
場 所 山手地区3号館2階共通セミナー室
お問い合わせ先 細胞構造研究部門 古瀬幹夫 (5277) 
要旨

  電子顕微鏡には仕様の異なる様々なタイプのものがあり、研究の目的に応じて最適なものが選択される。本セミナーでは演者が生理研の保有する三つユニークな電子顕微鏡(超高圧電子顕微鏡、SBF-SEM、低温電子顕微鏡)を用いて行ってきた研究を紹介する。一番目は、超高圧電子顕微鏡(超高圧電顕)による細胞内共生藻としてのクロレラと宿主ミドリゾウリムシとの相互連絡の形態解析である。生理研の1MV超高圧電顕は最大5 μmまでの樹脂包埋試料を観察することができる。クロレラを共生させているミドリゾウリムシを加圧凍結後、凍結置換法により樹脂に包埋し、その1 μmに近い厚切り切片の超高圧電顕トモグラフィーから、共生クロレラが宿主のミトコンドリアと物理的な接触により相互連絡していることを明らかにした。二番目は、連続ブロック表面走査型電子顕微鏡(SBF-SEM)を用いた細胞内共生細菌プロフテラの形態解析である。柑橘類の害虫として知られるミカンキジラミは、毒素をもつプロフテラを細胞内に共生させることにより天敵からの防御に使っている。一方のプロフテラは極小のゲノムサイズを持つ細胞生物の一つ(459 kbp)で、宿主に共生することでのみ生存できることが知られている。プロフテラの内部には直径約200 nmのチューブ状構造が複数存在し、その線状の形態維持に寄与していると考えられているが、その全体像は不明である。本研究では大面積の3次元微細構造解析に有効なSBF-SEMを用いてプロフテラ全長の構造を解析した。その結果、チューブ状構造はらせん状にねじれた数本の細い繊維から構成され、これが細胞のほぼ全長を貫き、細胞ごとに様々な数と長さで存在していることがわかった。また、このチューブ状構造がその極小ゲノムと関係していることも明らかとなった。三番目は、低温電子顕微鏡(Cryo-EM)によるノロウイルスキャプシドの高分解能構造解析である。Cryo-EMは急速で試料を凍らせてそのまま観察する方法である。本研究では、阪大にある最先端のCryo-EMも併用してノロウイルスキャプシド構造を3.7 Å分解能で解析し、その原子座標を決定した。さらに、ノロウイルスキャプシドが遺伝子型(数パーセントのアミノ酸)の違いで大きく構造変化することを見出した。