熊本大学生命資源研究・支援センター 動物資源開発研究施設(CARD)では、一般飼育室への病原微生物侵入防止、飼育中の実験動物の感染防御およびCARDから送り出す各種マウスの微生物学品質を一定に保つため、定期的な微生物モニタリングを中心とした微生物品質検査をおこなっている。
この中で、1989年より開始した微生物モニタリングは、感染実験領域を除く館内の全てのマウスとラットの飼育室を対象としてICLASモニタリングセンターが提唱している微生物のカテゴリーおよび国立大学法人動物実験施設協議会(国動協)が推奨している「微生物学的モニタリング対象微生物および寄生虫」で示されたステータスを参考に対象項目を定め、随時対象微生物、検査方法さらに検査頻度の検討を加えながら進めてきた。
モニタリング開始当初は、肺マイコプラズマ、ネズミコリネ菌やセンダイウイルスなど、現在の動物実験施設では珍しくなった病原微生物も検出され、病変のある動物や症状を示す動物も多く見つかっていた。我々は、これらの病原微生物を施設内から排除するために、微生物モニタリング用モニター動物から微生物カテゴリーBやCに含まれる病原微生物が検出された場合は、当該飼育室で飼育中の動物の隔離あるいは淘汰、飼育室のクリーニングさらには飼育室の再構築を進め、施設内からの病原微生物の排除のための対策をおこなってきた結果、現在は、病原微生物が検出されない状態となっている。
現在のような感染症に起因する病変の見つかる実験動物を見ることがなくなる時代が来るとは思ってもいなかったため、モニタリング開始当初に毎月のように見つかっていた各種感染症の自然感染による病変の写真記録を残していなかったことが悔やまれるが、今回は、CARDでおこなっているマウス・ラットの微生物検査についてこれまでの経験を交えて紹介する。
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