日 時 | 2018年06月20日(水) 10:30 より 11:30 まで |
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講演者 | 申 惠媛先生 |
講演者所属 | 京都大学大学院薬学研究科 |
場 所 | 生理研(明大寺) 1階 大会議室 |
お問い合わせ先 |
富永真琴 生理学研究所 細胞生理研究部門 生命創成探究センター 温度生物学研究グループ |
要旨 |
細胞膜やオルガネラ膜の脂質二重層は、サイトゾル側と細胞外側(または内腔側)においてリン脂質組成の非対称性を有し、動的秩序を保持している。このような非対称性は、二重層間におけるリン脂質のフリップ―フロップ運動によって調節されている。フリッパーゼのP4-ATPaseは、P-type ATPaseスーパーファミリーのサブファミリーである。他のP-type ATPase(Ca-ATPase, Na/K-pump, H/K-pump)が陽イオンを輸送するのに対して、P4-ATPaseははるかに大きいリン脂質を細胞外側(または内腔側)からサイトゾル側へと輸送(フリップ)することで、脂質二重層間の時空間的な脂質分布を調節する。酵母の遺伝学研究が先行するなか、動物細胞や組織におけるP4-ATPaseの活性および生理的役割は不明であった。これまでに私たちは、初めてこれらの細胞内局在を決定し、細胞膜に局在する一部のフリッパーゼのフリップ活性および基質特異性を決定した。また、近年フリッパーゼによる細胞膜の脂質分布の変化が膜曲率を形成することを明らかにし、フリッパーゼの活性が膜ダイナミクスに関与することを示した。さらに、フリッパーゼ活性の異常が遺伝病の発症と関連があることを初めて示唆し、近年シグナル依存的なフリッパーゼの活性調節の分子メカニズムを明らかにした。本セミナーでは、最近私たちが見出した基質特異的なフリッパーゼの活性調節機構および細胞での機能を中心に紹介し、フリッパーゼの生理的意義について議論したい。 |