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セミナー詳細

2018年10月26日

2光子カルシウムイメージング法によって捉えられた、マウス運動課題中における視床・大脳皮質運動野間の情報伝達ダイナミクス

日 時 2018年10月26日(金) 16:00 より 17:00 まで
講演者 田中 康代 先生
講演者所属 東京大学大学院医学系研究科 機能生物学専攻 細胞分子生理学 特任助教
場 所 生理学研究所(明大寺地区)1階 セミナー室AB
お問い合わせ先 鍋倉研・揚妻正和 (生体恒常性発達研究部門 age@nips.ac.jp)
要旨

 大脳基底核と小脳は運動学習においてそれぞれ非常に重要な役割を果たすが、それらが運動学習の際どのようなシグナルを大脳皮質に送るのかはわかっていない。大脳基底核と小脳からのシグナルは視床を通って大脳皮質へと送られる。我々は2光子顕微鏡によるカルシウムイメージング法を用いて、マウスが自発的にレバー引き課題を学習する際の、視床から1次運動野へ投射する視床皮質軸索のシナプス前部(軸索ブトン)の神経活動を計測した。レバー引き中の脳は揺れるためわずか数μmの軸索ブトンの活動を捉えるのは大変困難であるが、運動野に赤色蛍光タンパク質を同時に発現させ、さらに深さ方向を変えて3平面でイメージング画像を取得し、赤色蛍光輝度をもとにオフラインで3次元の揺れ補正を行った。その結果、揺れによるアーティファクトを最小限に抑えてイメージング画像を解析することに成功した。このようにして視床皮質軸索ブトン活動を運動野の1層と3層とでイメージングし、レバー引き中の活動を学習前後で比較した。その結果、1層に入力する軸索ブトンの活動はレバー引きの開始時と終了時に強くなり、3層に入力する軸索ブトンの活動はレバー引きの開始時のみに強くなることがわかった。また、レバー引き時の軸索ブトン活動は集団でシークエンス構造を示すことが分かり、その持続時間は1層の方が3層よりも長いことが示された。さらに、1層に入力する軸索ブトンの活動はレバーのキネマティクス、3層に入力する軸索ブトンの活動はレバー引きの成功率と関係していることが明らかになった。また、それぞれが大脳基底核あるいは小脳に強い影響を受けることがわかった。その一方で、どちらのシグナルを作り出すにも大脳基底核と小脳の両方の活動が必要であることも見出された。