日 時 | 2019年01月30日(水) 15:00 より 16:00 まで |
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講演者 | 松井鉄平 助教 |
講演者所属 | 東京大学大学院医学系研究科統合生理学分野 |
場 所 | 生理学研究所(明大寺)1階セミナー室 |
お問い合わせ先 | 近添淳一(生体機能情報解析室) |
要旨 |
安静時機能結合(resting-state functional connectivity)は非侵襲的な脳のネットワークの研究に広く使われるツールであり、離れた脳部位における脳血流信号の相関により測られる。機能的結合の空間的なパターンは、脳血流信号の背後にある神経活動の空間パターンを反映するものと考えられている。これまでの自発的神経活動の研究では、大脳皮質全体を伝播する波のような活動から、解剖学的に繋がった脳領野の瞬間的な同期発火まで、様々な時空間パターンが見つかってきた。しかしながら、これらの様々なパターンが互いにどのような関係にあるのかは良く分かっていなかった。また、これら種々の時空間パターンが機能的結合に寄与するかどうかも不明であった。我々はこのような問題を解決するために、マウスの大脳皮質全体において、神経活動由来のカルシウム信号と脳血流信号を高時空間解像度で同時記録する方法を開発した。本講演では、この技術を用いて得られた研究成果を中心にご紹介したい。まず我々は、二つの異なって見える活動パターン(大域的に伝播する活動の波と機能的結合の高い脳部位の瞬間的な同期活動)が実は互いに関係していることを発見した(Matsui et al., PNAS, 2016)。大域的な活動伝播の中では、それぞれが強い機能的結合で結ばれているような脳部位の組み合わせのうち、異なる組み合わせが異なる瞬間において同期発火しており、このことは機能的結合の持つ空間的な情報は大域的な活動伝播の位相情報として埋め込まれていることを示唆する。更に最近の研究では、神経活動と脳血流のそれぞれで計測した安静時機能結合の動態が良く対応していることを見いだした(Matsui et al., Cerebral Cortex, 2018)。時間がゆるせば、薬物投与による安静時機能結合の変化や、安静時脳活動と感覚入力との相互作用についても触れたい。 |