日 時 | 2019年11月19日(火) 16:00 |
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講演者 | 丸山健太博士 |
場 所 | 明大寺生理研棟 1階大会議室 |
お問い合わせ先 |
富永真琴 生理学研究所 細胞生理研究部門 生命創成探究センター 温度生物学研究グループ Tel: (0564) 59-5286, Fax: (0564) 59-5285 e-mail: tominaga@nips.ac.jp |
要旨 |
本邦における要介護認定を受けた75歳以上の高齢者は500万人を突破し、その4人に1人は骨粗鬆症を背景とする関節疾患や骨折によって寝たきりに近い毎日を送っている。長期臥床は肺炎や尿路感染に伴う敗血症リスクを増大させるのみならず、いわゆる褥瘡とよばれる皮膚の炎症を伴った損傷を誘発する。こうした皮膚や骨格系のトラブルの増加に伴い、老年医療における主訴の大部分が疼痛で占められるという事態も進行中である。それ故、骨破壊・敗血症・痛みの三者を適切にマネジメントするための治療標的の同定は、生活の質の低下に苦しむ超高齢化社会に課せられた喫緊の課題である。我々は、遺伝子改変動物を用いて骨代謝と炎症を同時に制御する因子を探索してゆくなかで、これまで知られていなかった複数の骨自然免疫系制御因子の同定に成功してきた。また、遺伝学的に痛覚神経を除去した無痛マウスの表現型解析をすすめる過程で、骨代謝系・自然免疫系・侵害受容系は個々の系が独立に機能している訳ではなく、外部環境への適応を目的とした相互作用による巧みな恒常性維持機構を内包していることを見出した。本講演では、「骨-自然免疫-痛覚トライアングル系」ともいうべき生理システムを俯瞰的に解き明かすことを通じて新たな医療の創発を目指す我々の試みを紹介したい。 |