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セミナー詳細

2020年11月17日

ペルオキシソームによる一次繊毛の生理機能の保証機構と疾患

日 時 2020年11月17日(火) 16:00
講演者 宮本達雄博士
講演者所属 広島大学原爆放射線医科学研究所
場 所 Online (Zoom)
お問い合わせ先 古瀬幹夫
生理学研究所細胞構造研究部門
furuse@nips.ac.jp
TEL: 0564-59-5277
要旨

 一次繊毛は、G0期細胞表面に発達する1本の毛様の微小管性構造である。一次繊毛を覆う細胞膜(繊毛膜)には、多様なシグナル受容体やイオンチャネルが集積しており、一次繊毛は細胞の「センサー器官」として機能する。一次繊毛のセンサー機能を担保するために、繊毛膜は、他の細胞膜領域に比べて、コレステロール含量が高く、特異な脂質組成であることが知られている。しかし、繊毛膜の脂質特性を産むメカニズムは不明な点が多い。
 一次繊毛関連遺伝子の欠損は、多発性嚢胞腎、多指症、網膜色素変性など特徴的な先天奇形を伴う一連の繊毛病を発症する。Zellweger症候群は、ペルオキシソーム形成遺伝子群の変異によって引き起こされる稀少な常染色体劣性遺伝病である。本疾患は、脂質代謝異常に起因する筋緊張低下、肝・脾腫大の好発の他に、多発性嚢胞腎や網膜色素変性などの繊毛病症状を高率に合併する。最近、我々はZellweger症候群患者皮膚線維芽細胞の繊毛膜のコレステロール量が低下することを見出した。また、生細胞イメージングや3次元-光・電子相関顕微鏡/集束イオンビーム・走査電子顕微鏡技術(3D-CLEM/FIB-SEM)を用いた観察から、ペルオキシソームは微小管上を運動した後、コレステロールを繊毛に供給することが明らかになった。さらに、高効率な遺伝子ターゲティング技術(CRISPR-ObLiGaRe法)を用いたノックアウト細胞ライブラリーの作製と表現型探索の結果、ペルオキシソームの繊毛への運動を担うRabin8/Rab10/KIFC3 複合体とペルオキシソームから繊毛へコレステロールを輸送する繊毛分子ORP3を同定した。これらの知見から、Zellweger症候群は繊毛膜コレステロールの低下による繊毛病であることが示唆された。