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セミナー詳細

2021年01月19日

方位弁別学習後のラット一次視覚野における低コントラスト優位な神経活動

日 時 2021年01月19日(火) 12:00 より 13:00 まで
講演者 木村梨絵先生
講演者所属 生理学研究所 視覚情報処理研究部門
場 所 Online (Zoom)
お問い合わせ先 近添淳一 (生体機能情報解析室 内線:7845)
要旨

 動物は外界の様々な刺激を知覚・認知し、その情報に基づいて行動する。見慣れた刺激であれば、判別が多少困難でも同様の行動出力が可能だが、その神経基盤はほとんど明らかにされていない。そこで、縦縞の提示時にはレバーを押し、横縞の時はレバーを引くという視覚弁別課題を、高コントラストの刺激を用いてラットに学習させた後に、刺激のコントラストを下げて弁別が困難な課題も実施し、この時の一次視覚野の発火活動を、多点電極を用いてマルチユニット記録した。これによって、低コントラストの方位弁別を実現する神経基盤を明らかにすることを目指した。
 高コントラスト刺激に強く応答する細胞だけでなく、低コントラスト刺激に強く応答する細胞を見出した。このような低コントラスト優位な細胞は、麻酔下や学習前ではほとんど観察されず、課題の正解時に強く活動した。また、低コントラスト優位な細胞を含めた細胞集団から提示した刺激が縦縞か横縞かをデコーディングすると、低コントラスト刺激の時には、この細胞を含めない場合に比べてその精度が良くなった。したがって、低コントラスト優位な神経活動は、低コントラストの方位弁別に寄与すると考えられた。
 このような低コントラスト優位な神経活動は、どのようにして生じるのだろうか。まず、学習後には興奮性の上昇が観察され、低コントラスト刺激でも強い視覚応答を示すと考えられた。また、一次視覚野の局所電場電位(LFP)を解析したところ、学習後には高コントラスト刺激提示時にベータ(18-30 Hz)帯域のオシレーションが強く生じた。さらに、この帯域の位相にロックした発火活動が生じ、特に抑制性細胞は、興奮性細胞に比べて位相がそろった活動を示した。高コントラスト刺激では抑制性の影響が強くなると考えられた。以上から、低コントラスト優位な神経活動は、興奮と抑制のバランスの変化によって作られることが示唆された。