Research

研究活動

セミナー詳細

2021年08月10日

感覚免疫学

日 時 2021年08月10日(火) 13:00 より 14:00 まで
講演者 丸山健太博士
講演者所属 生理研特別協力研究員・昭和大学医学部講師
場 所 Online (Zoom)
お問い合わせ先 生理学研究所 細胞生理研究部門
富永真琴
要旨
 侵害刺激によって活性化される神経や受容体は皮膚・腸をはじめとする上皮に分布することで痛みを感知し、生体防御の一翼を担っている。一方、病原体を認識して排除することを目的とする免疫系は上皮において発達しているため、上皮を場とする免疫反応は感覚系に影響を与えうる。しかし、感覚系と免疫系の研究は古来より独立した分野として発展を遂げており、両者の相互作用は殆ど研究されてこなかった。そこで我々は、上皮における感覚系と免疫系のクロストークを理解するための研究に着手した。その結果、皮膚の真菌感染によって生じる炎症と骨破壊が痛覚神経によって抑制されていることを見出した。また、痛覚神経とケラチノサイトの双方に真菌受容体が発現し、これらが協調しながら真菌感染随伴疼痛を発生させている分子機構の全貌を解明したほか、腸上皮に発現する機械刺激受容体が腸内細菌由来のリボ核酸を認識することで、腸炎や骨代謝を制御している一面を明らかにしてきた。一連の成果は上皮における感覚系と免疫系が多彩な分子を共有しながら互いに相互作用することで全身の生理機能を調節していることを示しており、生理学と免疫学を融合させた「感覚免疫学」ともいうべき学際領域の提唱に至っている。本講演では、生体の表面を場とする感覚免疫系の研究をつうじて新たな鎮痛薬・免疫調節医薬の創発を目指す我々の試みを紹介したい。