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セミナー詳細

2021年08月24日

遠隔炎症ゲートウェイ反射とストレスゲートウェイ反射による病態制御

日 時 2021年08月24日(火) 16:00 より 17:00 まで
講演者 長谷部 理絵 先生
講演者所属 北海道大学遺伝子病制御研究所・講師
場 所 Online (Zoom)
お問い合わせ先 神経機能素子研究部門 久保 義弘
要旨
ゲートウェイ反射(以下、G反射)は組織特異的な炎症病態を制御する神経回路である。私たちはこれまでに重力、痛み、ストレス、電気刺激、光刺激により誘導されるG反射を報告している。本講演では、新たに発見した「遠隔炎症G反射」と2017年に発見された「ストレスG反射」について紹介する。遠隔炎症G反射は、関節リウマチ、乾癬、間質性肺炎などで左右対称性に遠隔部位に生じる炎症病態の分子機構であり、炎症局所のATP シグナルが、感覚神経-脊髄介在神経-感覚神経回路を介して、原発とは離れた部位で炎症反応を誘導する。この遠隔炎症G反射では、ATPが神経伝達物質かつ炎症増悪因子として作用し、Nav1.8+感覚神経と脊髄のプロエンケファリン陽性デコリン陽性介在神経から構成される神経回路が重要であった。また、ストレスG反射では、それ自体では何ら病態を誘導しない軽度のストレスでも、血中に一定数のミエリン抗原を認識する自己反応性CD4+T細胞が存在すると、視床下部室傍核交感神経が活性化し、神経終末でノルアドレナリンが放出され、特定血管周囲で微小炎症が誘導される。ここでも炎症により産生されるATPにより視床下部背内側核・前核が活性化し、迷走神経背側運動核の活性化、副交感神経を介して上部消化管炎症、心臓の機能不全、突然死が誘導される。G反射に関連する神経回路の活性化、経路を解明し、G反射の人為的な制御によるヒト炎症性疾患の予防・治療法を開発したい。