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セミナー詳細

2021年10月08日

ゲートウェイ反射を制御する神経回路解析とニューロモデュレーション医療への応用

日 時 2021年10月08日(金) 9:30 より 10:30 まで
講演者 山﨑 剛士 先生
講演者所属 北海道大学遺伝子病制御研究所・特任講師
場 所 Online (Zoom)
お問い合わせ先 神経機能素子研究部門 久保 義弘
要旨  「ゲートウェイ反射」では、特定の神経回路が活性化することで特定の血管部位に自己反応性T細胞の血液中から組織への侵入口である「血管ゲート」が形成され、組織特異的な慢性炎症病態が進行する。現在までに、重力・電気・痛み・光・ストレス・炎症の6つの刺激によるゲートウェイ反射が報告されている。2012年に報告された「重力ゲートウェイ反射」では、マウスの後肢最大の抗重力筋であるヒラメ筋が重力刺激を受けることにより、第5腰椎レベルの後根神経節 (L5 DRG) から投射する感覚神経が活性化し、続いてL5交感神経節神経細胞が活性化する。その結果、L5背側血管周囲に分布する交感神経終末よりノルエピネフリンが分泌され、同部位の血管内皮細胞でNFkBが増幅・過剰となり、ケモカイン産生、タイトジャンクション分子の発現低下から血管ゲートが形成されてミエリンを認識する自己反応性T細胞が脊髄に侵入し、微小炎症が誘導される。また、2017年に報告された「ストレスゲートウェイ反射」では、ストレス刺激により視床下部室傍核交感神経が活性化し、神経終末でノルアドレナリンが放出され、脳の特定血管周囲で血管ゲートが形成される。ここでも血中のミエリンを認識する自己反応性T細胞の浸潤によって微小炎症が誘発され、産生されるATPにより視床下部背内側核・前核が活性化し、迷走神経背側運動核の上部消化管に分布する副交感神経の過剰な活性化から上部消化管炎症、心臓の機能不全、突然死が誘導される。本講演では、これら2つのゲートウェイ反射を中心に、血管ゲート形成及び病態発現を制御する神経回路、これを標的としたニューロモデュレーション医療の可能性について紹介する。