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研究活動

セミナー詳細

2021年11月08日

運動学習時における大脳皮質の神経回路選択的リモデリング

日 時 2021年11月08日(月) 13:00 より 13:45 まで
講演者 孫 在隣 博士
講演者所属 生理学研究所・脳機能計測・支援センター 電子顕微鏡室
場 所 Online (Zoom)
お問い合わせ先 窪田芳之
yoshiy@nips.ac.jp
要旨 大脳皮質は多様な情報処理を行うが、それを可能とする根幹となるのは、多様なニューロンの織りなす複雑な神経回路である。これまでも神経解剖学者らが脳の神経回路地図の作成に努めてきており、現代においても詳細な神経回路地図の作成が進んでいる。この神経回路地図は脳の構造基盤として重要であるものの、その中にある配線の1つ1つがどのような機能に貢献しているのかまでは不明である。特に、動物は成体となっても環境に適応すべく、その神経回路は接続を変化(リモデリング)させている。学習の際にどの神経回路がリモデリングを起こしているのかを観察することで、その配線の機能的意義が明らかになると考えられる。
私は現在、運動学習中の大脳皮質運動野神経回路のリモデリングを観察している。大脳皮質には皮質内での神経回路と、皮質下との連絡が複雑に絡み合っているが、それらの神経回路が運動学習中にどのように変化しているのかについては不明である。大脳皮質運動野には、特に高次運動皮質などからの皮質-皮質間連絡(cortico-cortical, CC)と、運動性視床核を経由した皮質下からの入力(thalamo-cortical, TC)が存在する。それらは運動野錐体細胞の樹状突起にある棘突起(スパイン)にシナプスを形成する。このシナプスは学習中に出現・消失を起こすことが知られており、神経回路が接続変化を起こしていることを示唆している。運動学習中のスパイン動態を生体2光子イメージングにて観察した後、固定脳標本を作成してpost-hoc免疫組織化学や光学顕微鏡・電子顕微鏡相関解析(correlated light and electron microscopy, CLEM)を行い、そのシナプス前終末の形態・由来を同定した。それにより、トップダウン性のCC入力と皮質下からのTC入力を受けるスパインはそれぞれ異なる動態を示すことが判明した。
本セミナーでは、このようなアプローチによって明らかになった神経回路選択的リモデリングを元に、神経回路地図の配線が持つ機能的意義を考察したい。