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2023年02月10日

大脳皮質一次視覚野6b層ニューロンの視覚応答選択性と経験依存的な可塑性

日 時 2023年02月10日(金) 11:00
講演者 米田 泰輔 博士
講演者所属 生理学研究所、視覚情報処理研究部門、特任助教
場 所 Zoomオンライン
お問い合わせ先 吉村由美子(内線7731)
要旨  大脳皮質発生の最初期に誕生するサブプレートニューロンは、出生前後の時期に視床軸索投射をガイドした後、その多くは細胞死によって消失する。生き残ったサブプレートニューロンは大脳皮質6b層に位置し、成熟脳の神経回路に組み込まれる。この6b層ニューロンは、感覚野においては感覚応答を示すことや、嗅内野では空間記憶に関与することが示唆されている。しかしながら、6b層は大脳皮質最深部にあり、細胞数が少なく、しかもヘテロな細胞集団によって構成されているため、その機能や可塑的変化はほとんど明らかにされていない。

 我々は生後3-4週齢の感受性期マウス一次視覚野において、2光子励起カルシウムイメージングと、サブプレートニューロンマーカーを用いた抗体染色と組織透明化を組み合わせることで、6b層ニューロンサブタイプを同定したうえで、視覚応答を記録する実験系を最適化した。6b層ニューロンの視覚応答を解析したところ、成熟マウスにおける先行研究と一致して、ブロードな方位選択性を示した。また6b層ニューロンは高い空間周波数に応答し、ブロードな選択性のチューニングを示した。6b層のニューロンサブタイプごとに解析したところ、ブロードな方位・空間周波数選択性はサブタイプで共通していたが、最適空間周波数はサブタイプに依存した違いがみられた。さらに同一の6b層ニューロンからの繰り返しイメージングによって、このニューロンが視覚経験依存的な可塑性を示すことを見出した。サブプレートニューロンには安定した視覚応答を示す細胞集団と、顕著な可塑性を示す集団が存在した。

 これらの結果は、生後の大脳皮質に生き残ったサブプレートニューロンは経験依存的可塑性によって機能が調節され、大脳皮質の他の層のニューロンと協調して視覚情報処理に関与することを示唆する。