要旨 |
ニューロン間の情報伝達はニューロン表象の形成を司る基本プロセスであり、これまでGranger因果性解析などの計算ツールを用いてその性質が調べられてきた (Hirabayashi et al., Science. 2013; Hirabayashi et al., Neuron. 2013)。しかし、真の因果性解析にはニューロン活動の操作が必要であり、近年の遺伝学的ツール開発により、霊長類モデルにおけるそうした因果性解析が急速に発展してきた。こうした遺伝学的脳活動操作を全脳機能イメージングと組み合わせる事で、既存の仮説にとらわれる事なく、データ駆動的に操作部位を決定し、かつ局所的な神経活動操作の影響がどのようにネットワークに広がり、行動の変容をもたらすかを可視化する事ができる (Hirabayashi et al., Neuron. 2021)。 さらに、そうした霊長類モデルにおける因果性解析は、ヒトにおける精神・神経疾患に関する病態生理のメカニズム理解に直接繋がり得る。本講演では、こうしたトピックスに関わる霊長類モデルにおける因果性解析に関わる下記3つの研究についてお話しし、議論したい:1. 側頭葉局所回路における長期記憶想起時のニューロン間情報伝達ダイナミクス 2. 化学遺伝学と機能イメージング、及び電気生理の融合による短期記憶に関わる大規模ネットワーク作動のマルチスケール理解 3. 霊長類モデルにおける遺伝学的因果性解析の新たな応用としての神経変性疾患に関するリバーストランスレーショナルリサーチ
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