日 時 | 2024年06月10日(月) 9:30 より 10:30 まで |
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講演者 | 高田 望 先生 |
講演者所属 | ノースウエスタン大学医学部 |
場 所 | Zoomオンライン |
お問い合わせ先 | 吉村由美子 (yumikoy@nips.ac.jp) |
要旨 |
⽣命の恒常性維持やその破綻である疾患や⽼化の過程で多くの代謝産物が⽣成される。ヒト代謝産物データベースでは遺伝⼦の10倍の数の代謝産物が検出されており、そのうち病気と関連するものが約2万種類報告されている。このことから代謝産物はバイオマーカーのみならず、機能的分⼦としてヒトの⽣命活動に関わっている可能性が考えられる。⼀⽅、発⽣における解糖系の破綻は様々な臓器形成不全を導くが、その詳細な分⼦背景や乳酸の役割は未知であった。 私はこの15年間、哺乳類の臓器形成メカニズムを解明するためマウス遺伝学を⽤いた基礎研究と、その知⾒に基づく多能性幹細胞から臓器形成を実現するオルガノイド科学技術の開発に取り組んできた。最近私たちが開発した代謝システム解析ツールによりエネルギー代謝と独立した発生プログラムを制御する機序を発見した。具体的には、個体グルコースイメージングおよびメタボライト追跡法により神経網膜特異的に解糖系の活性が高いこと、マウスおよびオルガノイドの解糖系変異体で眼の形成不全を導くことを示した。その分子背景として乳酸がHDAC依存的にエピジェネティック修飾を制御し、網膜発生プログラムと相互作用する結果を示した。 従来、代謝研究は主にエネルギー産⽣との関連が注目されてきた。⼀⽅、私の研究成果では、発⽣を制御する代謝システムを⼤きく⼆つにわけることにより、エネルギー依存的経路(古典的)と⾮依存的経路(⾮古典的)の両⾯から発⽣代謝の役割を紐解いていく研究が可能になってきた。今後は代謝が寄与する臓器構築の基礎研究をもとにヒト臓器を試験管で創造する分子ツールの開発、さらに疾患制御といったヒトの生理活動の理解へ貢献する基盤研究を展開したい。すなわち代謝から臓器の恒常性維持機構を統合的に理解する分野に貢献することを目指す。 |