要旨 |
私たちの運動は、環境や他者などの外部からもたらされるリズムに引き込まれやすい。例えば好みの音楽に思わずリズムを合わせてしまうことは多くの人が経験ずみだろうし、逆に同期的な運動をすると他者への好意が高まるという研究結果もある。このような運動の引き込みが集団や社会の形成に利すると説かれて久しく、運動同期と他者理解とのオーバーラップも直感的には感じられるものの、その神経メカニズムは明らかではない。そして神経メカニズムの詳細を検討するには、動物モデルが不可欠である。そこで、ニホンザルでもヒトと同様の引き込み現象が生じるかを検討した。その結果、他者の運動を見つつ自己も運動を行うことで、他者のリズムに影響され、運動が引き込まれることが観察された。また、社会的な文脈が強いほど運動の引き込みも強いことが判明した。さらに社会的ヒエラルキーが高い個体ほど他者の運動に合わせる様子も観察された。すなわち、ニホンザルは運動引き込みの神経メカニズムを詳細に検討するための動物モデルとして適すると言える。現在、この運動課題遂行中に得られた運動関連領域の神経活動の記録と解析を進めている。その予備的な結果を紹介したうえで、本研究の今後の展望について議論できればと思う。
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