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セミナー詳細

2024年12月12日

アクチン細胞骨格の制御機構から紐解く生体の恒常性維持機構

日 時 2024年12月12日(木) 17:00 より 18:00 まで
講演者 武谷 立 先生
講演者所属 宮崎大学 医学部 薬理学分野
場 所 生理学研究所 1F大会議室
お問い合わせ先 鍋倉 淳一 (nabekura@nips.ac.jp)
要旨  アクチンは真核細胞に最も多く含まれる蛋白質の一つであり、筋細胞のみならず非筋細胞にも豊富に存在する。細胞内では、単量体および重合体である線維の2つの状態間をダイナミックに行き来しながら、さまざまな細胞の機能発現と秩序維持に貢献している。単量体および重合体の間のダイナミクスは、アクチン重合因子をはじめとした多様なアクチン結合分子によって制御されている。我々は、アクチン重合因子であるフォルミン蛋白質ファミリーのFhod1およびFhod3を同定し、その機能解析を通じて、アクチン細胞骨格が担う生体の恒常性維持のメカニズムに挑んできた。Fhod3は、心筋の収縮装置である“サルコメア”を構成するアクチン線維の形成・維持を通じて心発生や心機能維持に必須の役割を果たし、その変異はヒト肥大型心筋症を引き起こす。本講演では、胎生期に心拍を開始して以降、休むことなく拍動を続ける心筋サルコメアの恒常性を担保する、アクチン重合の緻密な制御機構について、我々の知見と作業仮説を紹介したい。一方でFhod3は、発生初期の神経上皮細胞の頂端収縮を介した神経管閉鎖や、生後の大脳皮質錐体細胞の樹状突起スパインの形態形成、内耳の蝸牛有毛細胞のクチクラ板に局在して聴覚制御など、心臓以外でも多彩な生体機能に関わっている。これらの多面的な機能発現の分子基盤に迫るべく、立体構造情報とAIによる構造予測を組み合わせて、Fhodによるアクチン重合活性の調節機構の解明に取り組んでいる。これらのトピックに関する最新の知見をおりまぜながら、アクチン動態制御による多様な生体機能の発現機構について議論を深めたい。