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2025年06月17日

演題:記憶と空間表象を支える神経基盤の解明:成体新生神経細胞と中隔-海馬・嗅 内皮質ネットワークの役割

日 時 2025年06月17日(火) 11:00 より 11:45 まで
講演者 山口 拓馬
講演者所属 University of Utah
場 所 Zoom オンライン
お問い合わせ先 和氣弘明(研究連携センター) wake.hiroaki.r9@f.mail.nagoya-u.ac.jp
要旨 これまで博士課程およびポスドク期間を通じて、学習および記憶の神経回路機構
を、特に海馬および嗅内皮質に着目して研究を行ってきました。
 博士課程では、海馬⻭状回で成体新生してきた神経細胞、特に成体新生後 3 週齢以
内の未熟な神経細胞と記憶の関連について研究しました。これまで未解明であった
記憶獲得後の未熟神経細胞の役割を調べるため、記憶獲得後に未熟神経細胞を切除
するツールとして、レンチウイルスとジフテリア毒素を用いた系を構築しました。
この系により記憶の評価を行ったところ、記憶試験の初期段階で見られる記憶想起
には影響を及さなかった一方で、初期想起後の学習行動の持続性の低下が観察され
ました。この行動パターンは、水迷路の空間記憶や、トレース恐怖条件付けおよび
文脈的恐怖条件付けの 3 種類の海馬依存的課題において一貫して観察され、未熟神
経細胞が初期想起後の記憶行動の維持に重要であることが示唆されました。
ポスドク時には、汎性投射系である内側中隔核およびブローカの対角帯核 (MSDB)
が、海馬および嗅内皮質における空間表象ニューロンの活動にどのような役割を持
つのかを調べました。具体的には、海馬および嗅内皮質に投射した MSDB の軸索を
二光子イメージングで可視化し、コリン作動性およびパルブアルブミン陽性 GABA
作動性ニューロンの細胞腫特異的なスピード・新規性シグナルを同定しました。得
られた活動パターンに基づき、嗅内皮質での空間表象への影響を数理モデルで予測
しました。これを確認するために、現在は、化学遺伝学および電気生理学的手法に
て実証データを取得中、その予備データを示します。