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セミナー詳細

2025年06月16日

マーモセット高次脳機能解析のための神経活動測定技術の開発

日 時 2025年06月16日(月) 12:00 より 12:45 まで
講演者 纐纈 大輔
講演者所属 北海道大学 人間知・脳・AI研究教育センター
場 所 Zoom オンライン
お問い合わせ先 和氣弘明(研究連携センター) wake.hiroaki.r9@f.mail.nagoya-u.ac.jp
要旨  マーモセットは小型の霊長類動物(体重300-500 g)で扱いやすく、遺伝子改変マーモセ
ットや脳・神経疾患モデルも報告されていることから、神経科学研究分野におけるモデル
動物としての利用が期待されている。我々はこれまでに覚醒下のマーモセットから神経細
胞活動を記録する技術および装置の開発を行い、頭部を固定した動物からの神経細胞活動
の記録に成功している。そして、霊長類で高度に発達している前頭連合野(PFC)の脳活動
を測定するためには、マーモセットが記憶・認知などの高次脳機能に関連する行動課題を
遂行中に細胞活動を記録する必要がある。動物のハンドリング、トレーニング方法を工夫
した結果、頭部固定の状態でマーモセットにワーキングメモリー課題を遂行させることに
成功した。この遅延見本合わせ課題では、マーモセットは手がかり刺激の位置、色、形な
どの特徴を記憶し、遅延時間の間この情報を保持した後に、手がかり刺激と同じ特徴を持
つターゲット刺激を選択しなければならない。場所手がかり条件では、マーモセットは約
80%の正答率を示した。一方、色や形の手がかり条件では、正答率はそれぞれ60%程度に
とどまった。そして、記憶課題遂行中のマーモセットのPFCから電気生理学的に神経活動
を記録したところ、記憶保持期間中に活動する細胞を見出した。さらに、皮質内微小電気
刺激や細胞活動記録などの電気生理学的手法を用いて、前頭皮質の機能マップを作成した
。マーモセットのPFCは、運動前野の前肢領域と前頭眼野の前方に位置しており、前頭皮
質領野の相対的位置関係は、ヒトやサルの脳と同様であった。
 マーモセットの脳はヒトやマカクザルの脳と比べると脳溝が少なく、多くの皮質領野が
脳表に露出している。このことはヒト、マカクザルでは脳溝の奥にあるような部位に相当
する皮質領野でも、マーモセットでは容易にアプローチが可能であることを意味している
。例えばCaイメージングなどの技術を用いれば、複数の皮質領野にわたる活動を同時に計
測可能である。そこで、マーモセットを用いた1光子マクロイメージング技術の確立を目
指した。PFCのCaシグナルは、ワーキングメモリー課題の遅延期間中に上昇を示し、記憶
に関連したCa応答は、PFCの広い領域で観察された。以上のように、マーモセットにおけ
る神経活動計測の技術を確立し、PFCの機能の解明を目指している。