日 時 | 2025年10月31日(金) 10:30 より 11:30 まで |
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講演者 | 角田 圭輔 先生 |
講演者所属 | Postdoctoral Research Associate, Department of Biomedical Engineering, University of Utah, USA |
場 所 | 生理学研究所 1Fセミナー室A/B |
お問い合わせ先 | 竹村 浩昌 (htakemur@nips.ac.jp) |
要旨 |
近年、生体を傷つけることなく脳深部の神経活動を操作する非侵襲-脳刺激技術が大きく発展している。従来の経頭蓋電流刺激(tDCS)や磁気刺激(TMS)では介入が困難であった脳深部構造に対し、ミリ単位の空間分解能で神経活動を精密に調節する技術として、低強度集束超音波(LIFU: Low-Intensity Focused Ultrasound)が注目されている。 本研究では、情動を司る扁桃体および分界条床核に着目した。これらの神経核は、古典的な切除実験に始まり種々の機能的脳画像研究によって、情動に関わることが明らかとなっている。一方で脳深部に位置するという解剖学的な制約は、その機能を非侵襲かつ因果的に検証することを困難にしていた。我々は新たに開発した256ch多点集束超音波システムを用いて、これらの神経核群へLIFU刺激を行った。情動反応を誘起する画像をアカゲザルに提示し情動反応として瞳孔径を定量した結果、驚くべきことにLIFUは脅威条件の画像のみ瞳孔反応を特異的に調節した。この結果は、標的領域が脅威情報の処理に因果的に関与することを可逆的かつ非侵襲に示す強力な証拠となる。 LIFUは認知神経科学における新たな因果的な研究戦略を拓き、精神・神経疾患に対する新たな治療法となることが期待される。 |