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セミナー詳細

2016年02月01日

単一細胞レベルでの形態解析から見えてきた、視床ニューロンの新しい分類と機能

日 時 2016年02月01日(月) 17:00 より 18:00 まで
講演者 倉本恵梨子先生
講演者所属 鹿児島大学医歯学総合研究科
場 所 山手地区2号館2階西 セミナー室
お問い合わせ先 窪田芳之 (大脳神経回路論研究部門 yoshiy@nips.ac.jp) 内線5282
要旨

ラット大脳皮質運動関連領野へ投射する視床核として、前腹側核-外側腹側核 (VA-VL) と内側腹側核 (VM) が知られる。VA-VL核は、大脳基底核からの情報を受けるinhibitory input-dominant zone (IZ) と小脳からの情報を受けるexcitatory subcortical input-dominant zone (EZ) に分けられる。Sindbisウイルスベクターを用いて視床皮質投射を単一細胞レベルで調べたところ、IZニューロンは主に皮質1層へmatrix typeの入力を送るのに対して、EZニューロンはcore typeとして皮質中間層に強く入力するという特徴を有し、さらにIZ、EZともに単一細胞レベルで運動関連領野に広く入力して皮質カラム構造を反映しないことを明らかした。次に、IZと同様に基底核情報を担うVMについて検討し、1) VMには運動関連領野に主として投射するニューロンと、前頭前野、特に眼窩野/前帯状野に強く投射するニューロンの2群が存在する、2) VMニューロンの軸索の78%が皮質1層に分布し、matrix typeの入力を示したが、これはIZニューロンの54%よりも高率である、などの所見を得た。, さらに、高次運動関連領野と考えられる前頭前野と関連が深い、背内側核 (MD) についても同様の手法で調べた結果、MDニューロンの軸索の80%が皮質中間層に分布したことから、前頭前野はVMからmatrix typeの入力を、MDからcore typeの入力を受けることが判明した。また、MDニューロンの特徴として、単一細胞が複数の皮質領野に軸索投射すること、投射先の領野のバリエーションが豊富であること、直径 1 mm 程度のaxon bushを形成することが明らかになった。EZニューロンとMDニューロンは、ともにcore typeに分類されるものの、そのaxon bushの広がる範囲が異なることから、運動関連領野と前頭前野はそれぞれ異なるメカニズムで機能を発現していると推測される。

参考文献

Kuramoto,  E.,  Furuta,  T.,  Nakamura,  K.C.,  Unzai,  T.,  Hioki,  H.,  and Kaneko,  T. (2009). Two types of thalamocortical projections from the motor thalamic nuclei of the rat: a single neuron-tracing study using viral vectors. Cerebral cortex 19,  2065-2077

Kuramoto,  E.,  Ohno,  S.,  Furuta,  T.,  Unzai,  T.,  Tanaka,  Y.R.,  Hioki,  H.,  and Kaneko,  T. (2015). Ventral medial nucleus neurons send thalamocortical afferents more widely and more preferentially to layer 1 than neurons of the ventral anterior-ventral lateral nuclear complex in the rat. Cerebral cortex 25,  221-235.