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抑制系の神経活動が耳鳴りの症状に関与している
~耳鳴りの診断方法の開発へ~

2017年3月 2日 プレスリリース

内容

耳鳴りは非常に一般的な病気で、多くの方々が耳鳴りに悩んでいます。しかしながら、耳鳴りの発生メカニズムには不明な点が多く、科学的根拠に基づく治療方法も非常に限られています。また耳鳴りの診断は患者さんの主観的な訴えに基づいており、客観的に耳鳴りを診断することもできません。今回、自然科学研究機構生理学研究所の岡本秀彦准教授、柿木隆介教授と名古屋市立大学の関谷健一医師、村上信五教授らは共同で、耳鳴りが聞こえる耳では不要な神経活動を抑える抑制系神経の活動が低下していることを明らかにしました。現在では困難である耳鳴りの客観的な診断方法の開発や、耳鳴りの発症メカニズムの解明に貢献する研究成果です。本研究成果はジャーナルオブニューロフィジオロジー誌(Journal of Neurophysiology)に掲載されました(1月4日にオンライン出版)。

研究グループは、ヒトの脳活動を脳磁計という機械で非侵襲的に測定し、病気やリハビリテーションなどにより脳活動がどう変化するかを研究してきました。本研究では、聴力に左右差はないが、片耳だけに耳鳴りが聞こえる患者に対し、映画をみさせるなどリラックスしている状態で、静寂下及び雑音下に耳鳴りと同じ周波数の音を聞かせ、その時の脳の反応を記録しました。すると、雑音の中から音を聞き分ける時の脳活動が、耳鳴りが聞こえる耳の方が聞こえない耳より弱くなっていました。雑音下で音を聞き取る場合、抑制系の神経活動が重要な枠割を果たしているのですが、その力が耳鳴りの聞こえる耳では弱っていることを示す結果です。
岡本准教授は、「これまでの研究では、耳鳴りの患者さんの脳活動の変化が耳鳴りによるものなのか、難聴によるものなのかがはっきりしないことが多かった。今回の研究により、抑制系の神経活動が耳鳴りの症状には重要であることが明らかになりました。今後さらに耳鳴りの発症メカニズムの解明や客観的な診断方法の開発を進めることで、より効果的な治療法の開発に役立てて行きたいと考えています」と話しています。

本研究は、文部科学省科学研究費補助金の補助を受けて行われました。kakenhi_logo.jpg

今回の発見

耳鳴りが聞こえる耳と耳鳴りが聞こえない耳で音を聞いた時の脳活動を比較したところ、耳鳴り周波数の音に対する聴覚反応は、静寂下では耳鳴りが聞こえる耳で大きいのに対して、雑音環境下では逆に耳鳴りの聞こえる耳で小さくなっていた。耳鳴りの聞こえる耳では抑制系の神経活動が低下していることを示唆する結果であり、耳鳴りの有無が客観的な脳活動データに影響を及ぼすことを明らかにした。

図1 脳磁計を用いた脳活動の測定

 

201702okamoto_1.jpg 

 

  

 

  脳磁計と呼ばれる機械で音を聞かせた時の脳活動を計測します。脳磁計は脳活動由来の磁場反応を計測するだけですので、機械自体が電波のような物を出しているわけではありません。そのため、非常に安全で非侵襲的に脳活動を計測することが出来ます。

 

図2 静寂下および雑音下での脳活動

201702okamoto_2.jpg耳鳴りが聞こえる耳と聞こえない耳に音を聞かせた時の脳活動を比較しました。静寂下(黒色の棒グラフ)では耳鳴りがある耳の方が脳活動が大きかったのに対して、雑音下(白色の棒グラフ)では耳鳴りがある耳の方が脳活動は小さくなっていました。

この研究の社会的意義

耳鳴りに対する客観的な診断方法の開発
耳鳴りに悩む患者さんの数は非常に多く、本邦における耳鳴りの有病率は10%前後と報告されています。しかしながら、耳鳴りの神経メカニズムには不明な点が多く、客観的な診断方法もありません。残念ながら耳鳴りの診断は、患者さんの訴えのみに依存しているのが現状です。今回の研究では耳鳴りの有無が客観的な脳活動データに影響を与えていることを明らかにすることが出来ました。今後さらに研究を発展させることで、耳鳴りの神経メカニズムの解明や客観的な診断方法の開発のみならず、より有効で副作用のない新しい耳鳴りの治療法につながっていくことが期待されます。

論文情報

Broadened population-level frequency tuning in the auditory cortex of tinnitus patients.
Kenichi Sekiya, Mariko Takahashi, Shingo Murakami, Ryusuke Kakigi, Hidehiko Okamoto.
Journal of Neurophysiology ジャーナルオブニューロフィジオロジー 2017年1月4日

お問い合わせ

<研究について>
自然科学研究機構 生理学研究所 統合生理研究部門
准教授 岡本 秀彦 (おかもと ひでひこ)
教授    柿木 隆介 (かきぎ りゅうすけ)


<広報に関すること>
自然科学研究機構 生理学研究所 研究力強化戦略室
TEL:0564-55-7722、FAX:0564-55-7721
EMAIL:pub-adm@nips.ac.jp

リリース元

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