脳の構造と機能には一定の対応関係が認められるが、その形成メカニズムについてはほとんどわかっていない。そこで、本セミナーでは、これまでに私が取り組んできた、ヒト脳マッピングの形成原理、特に言語側性化に関するMRI研究について述べる。
白質神経線維の観察には拡散テンソル法(DTI)が一般的だが、言語入力に必須である聴放線などの微細神経の評価には拡散スペクトラム法(DSI)が優れている。このDSIと灰白質の構造解析およびfMRIとを組み合わせて、統合失調症の幻聴の病態解明に取り組んでいるので研究経過を紹介したい。また言語機能の左右差(側性化)はfMRIで評価されるが、従来の側性化指標計算法には閾値設定などに課題があった。そこでそれらを解決し、閾値を設定しない指標を開発してウェブ(http://aveli.web.fc2.com/)に公開した。この新しい指標を使って統合失調症患者を調べたところ、「言語左側性化の減少」が確認された。これは発
達障害や高齢者などにも見られる現象である。
今後は視覚野など他の機能部位の形成をも含め、ヒト脳マッピングの仕組みの
解明に貢献したい。これには言語右半球優位者を含む多様なデータ収集が必要で
あり、そのためのコホートMRIを提案したい。
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