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3量体Gタンパク質αサブユニットの局在を 決定する脂質修飾酵素の同定

研究報告 2008年11月19日

概要

Gタンパク質共役型受容体(GPCR)はヒトでは700種類以上存在し、平滑筋収縮や神経シナプス伝達等、様々な生理機能を制御する。GPCRを介した情報伝達経路は気管支喘息治療薬等、多くの薬剤の標的となっており、GPCR情報伝達経路の制御機構の解明は極めて重要である。今回、私共はGPCRを介した情報伝達において要となる3量体Gタンパク質αサブユニット(Gα)の細胞膜への局在を決定する脂質修飾酵素を同定した。さらに、本酵素によるGαの細胞膜への移行がGPCRを介した情報伝達に必須であることを見出した。

Gαは可逆的なパルミトイル化脂質修飾(炭素鎖16からなる飽和脂肪酸パルミチン酸が蛋白質に付加される翻訳後脂質修飾)を介して細胞膜に局在し、GPCRを介した外界シグナルを細胞内の標的蛋白質に伝達する(図1)。しかし、Gαのパルミトイル化反応は酵素に依存しないという説が古くから提唱されるなど、その存否には議論が絶えなかった。今回、私共は23種のDHHCパルミトイル脂質転移酵素群を独自に開発してきたスクリーニング法によりスクリーニングし、DHHC3およびDHHC7がGα(Gαq、GαsおよびGαi2)のパルミトイル化レベルを著しく亢進させることを突き止めた。また、DHHC3およびDHHC7をノックダウン法により発現抑制させるとGαq⁄11のパルミトイル化レベルが低下し、Gαq⁄11が細胞膜から細胞質へ移行することを見出した。一方、光変換(photoconversion)技術を用いてGαqの細胞内動態の解析を行ったところ、Gαqは細胞膜に静的に存在するのではなく、細胞膜とDHHC3 ⁄ 7が局在するゴルジ装置の間をパルミトイル化依存的に双方向に行き来することを見出した(図2、3)。さらに、DHHC3 ⁄ 7のパルミトイル化酵素活性がGPCRの一つであるα1Aアドレナリン受容体/Gαq/11を介した情報伝達に必須であることを見出した。以上の結果より、パルミトイル化脂質酵素DHHC3 ⁄ 7がGαの細胞内局在を規定することによりGPCRを介した情報伝達を新たな機構で制御していることが明らかとなった。

http://mcb.asm.org/cgi/reprint/MCB.01144-08v1?view=long&pmid=19001095

論文情報

Identification of G-protein α subunit palmitoylating enzyme
Ryouhei Tsutsumi1, Yuko Fukata1,2, Jun Noritake1, Tsuyoshi Iwanaga1, Franck Perez3, 4, and Masaki Fukata1,2*
Molecular and Cellular Biology 2008

  1. Division of Membrane Physiology, Department of Cell Physiology, National Institute for Physiological Sciences, Okazaki, Aichi 444-8787, Japan
  2. PRESTO, Japan Science and Technology Agency, Chiyoda, Tokyo 102-0075, Japan
  3. Centre National de la Recherche Scientifique, Unité Mixte de Recherche 144
  4. Institut Curie Section Recherche, 75248 Paris Cedex 05, France

参考図

【図1】 GαはGPCRを介した外界シグナルを細胞内へ伝達する分子スイッチとして機能する

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【図2】 GαはGPCRを介した外界シグナルを細胞内へ伝達する分子スイッチとして機能する

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光変換により緑から赤(白色表示)に蛍光が変化するDendra2を融合させたGαqをHeLa細胞に発現させ、細胞膜並びにゴルジ装置に存在するGαqの動態を観察したところ、Gαqは細胞膜とゴルジ装置の間を高速度で双方向に輸送されていることを見出した。上段はゴルジ装置に局在するDendra2-Gαqを光変換し、10分以内に細胞膜に到達することを示し、下段は細胞膜に局在するDendra2-Gαqを光変換し、10分以内に細胞膜全体とゴルジ装置に再分布する様子を示している。

【図3】 パルミトイル化を介したGα細胞内動態モデル

20081119_3.jpg

細胞膜上のGαは脱パルミトイル化されて細胞質に移行し、ゴルジ装置に存在するDHHC3 およびDHHC7により再パルミトイル化され一時的にゴルジ装置に集積する。Gαはその後Gβγとともに小胞輸送などにより細胞膜に移行する。PPT: 脱パルミトイル化酵素

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