神経シグナル研究部門では,脳/ 脊髄スライスやin vivo 動物から神経活動を記録することにより,シナプス・神経回路における情報処理機構を解き明かそうとしています。また,遺伝子改変により作出した病態モデル動物を用いて,分子・細胞から個体のレベルまで幅広く解析し,学習記憶障害ならびに神経疾患,意識や情動に関連した疼痛の発症機序を多角的に理解したいと考えています。国内外の研究室とも連携して共同研究を積極的に行うとともに,電気生理学・組織学・行動解析など基本的手法に加え,神経細胞の光遺伝学的操作やコンピュータシミュレーションを始めとする最新技術の導入を進めています。主な研究課題は以下の通りです。
(1) 意識・情動など高次脳機能と疼痛調節機構の解明:光操作とin vivo パッチクランプ法による検討(図1A)
(2) 中枢神経系における疼痛情報伝達の定量的記録と自律神経活動を指標とした下部尿路中枢の機能評価1,2
(3) シナプス間拡散性クロストークの分子的基盤:グリア細胞とトランスポーターの役割3(図1B)
(4) 神経回路機構のシミュレーション解析
(5) 分子から記憶へ:遺伝子改変マウスを用いた学習・記憶行動の解析(図1C)4
(6) 神経疾患(難治性疼痛・ジストニアなど)の病態解明
図1 神経回路における情報処理機構の多角的研究:分子から個体まで