以前から「心の痛み」といった表現が良く使われてきたが、その実態は不明であった。しかし、今回の研究で初めて心が痛いと感じるときの脳活動が明らかにされた。研究では、機能的MRI (fMRI)を用いて、痛みを想像したときの脳活動を計測したところ、それは本当に痛みを与えられたときとほぼ同一の場所であった。また、恐怖の画像を呈示した時には扁桃体に活動が見られ、同じような不快な画像に対しても、心が痛い時とは異なる脳活動が見られた。本研究により、確かに「心は痛む」ことを、最新の脳科学機能画像を用いて初めて科学的に証明することに成功した。近年、科学文明が進むことによって発生している様々な新しい心の問題、例えば教育現場で問題になっている「いじめ」や、社会恐怖症、あるいはうつ病の増加などの原因解明や治療につながる重要な研究と考えられる。
なお、この研究は群馬大学麻酔科との共同研究の成果である。
Ogino Y, Nemoto H, Inui K, Saito S, Kakigi R, Goto F. Inner experience of pain: imagination of pain while viewing images showing painful events forms subjective pain representation in human brain. Cerebral Cortex 2007; 17: 1139-46.
心の痛みを感じたときの脳活動:帯状回前部と両側半球の島に特異的な活動が見られ、それは実際に針などで痛みを与えたときとほぼ同様の部位であった。