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セミナー詳細

2015年09月10日

見えない形の見える化の試み: グリア細胞の形態計測解析によるALSの病態形成メカニズムへの新規アプローチ

日 時 2015年09月10日(木) 16:00 より 17:00 まで
講演者 大篭友博 助教
講演者所属 九州大学 大学院医学研究院 神経解剖学分野
場 所 明大寺地区 生理研一階セミナー室
お問い合わせ先 吉村由美子(視覚情報処理研究部門、7731)
要旨

筋萎縮性側索硬化症 (ALS) の病態形成には、初期においては軸索輸送障害などによる神経細胞自律的変性が、後期においては神経細胞非自律的変性が関わっていることが示されているが、グリア細胞の病初期の関与については不明な点が多い。
 (1) ALSのモデルマウスの一つであるSOD1G93Aマウスを用いて、脊髄ミクログリアの3次元再構築と、多変量形態計測データに基づくクラスター解析を行った。これにより、ALSの病初期のミクログリアは、既知の静止・活性型サブタイプと異なる独自の形態学的特徴を有することを見出した。また、このサブタイプは、リポポリサッカライドの投与では誘導されず、薬理学的に軸索輸送を阻害した場合にのみ誘導された。これらから、ALSの病初期には、軸索輸送障害に伴って生じるミクログリアの新規サブタイプが関わる未知の病態形成メカニズムが存在する可能性が示唆された。
  (2) 病初期のSOD1G93Aマウス脊髄前角運動ニューロンの細胞体周辺微小環境を、蛍光四重ラインプロファイル解析により評価した。事前の予想とは異なり、ALSの病初期においては、細胞体へのシナプス前終末・アストロサイト・ミクログリアのコンタクトレベルは変化しないという結果を得た。一方で、病初期の運動ニューロンの細胞体シナプス前終末の分子プロファイル解析により、グルタミン酸過活動を示唆する所見を見出しており、ALSの新たな病態形成メカニズムの同定につながる可能性がある。