ご挨拶

2010年12月U   伊佐 正 

                                 年の暮れ
脳プロの成果報告会(11月30日―12月1日)が終わると年の暮れを意識するというのがこれで3年目である。しばらく前のこの欄にも書いたが、いつも成果報告会の前は大変である。ただ、今回は無理を承知で頑張った結果、ウィルスベクターを使ってシステム神経科学にとって革命的な実験手法を開発できた。詳細は来年には論文で出したいのでそれまでのお楽しみということで・・・

カナダのキングストンに来ている(12月7−14日)。Doug Munozとは、元来研究分野が近いので親しかったが、特に2005年に一緒に始めたHFSP以来、研究室同士で緊密な共同研究を続けている。多分年齢も近く、色々な面で馬が合うのだと思う。今回はそのひとつのラインの仕事の最後の決め手となる実験をするために、ポスドクの加藤利佳子さんと一緒にやってきた。ここ数回、Dougが「ミニ・サバティカル」と称して岡崎にやってきては、楽しそうにしていたのが羨ましくなり、今回は逆に私がKingstonに来た、という訳だ。
仕事は、マウスのスライス(我々)とサルの電気生理とbehavior(Doug)、それにモデリング(Laurent Itti)という3つの流れを組み合わせてボトムアップ型注意のメカニズムの一端を明らかにしようとする少々無謀とも思える大胆な企てで(こういうのが本当に楽しい)、その最後の積み木の一片である、スライスで明らかになった薬理学的ツールをサルで試す、という実験が本当に上手く行くのかどうかを確かめようとするものだ(始めてみたが実際やってみるとそんなに簡単ではないこともわかってきた)。また、今一緒に書いているスライスの論文について深く突っ込んで議論するのも目的だった。今回は一週間と、私としては少しゆったりとした予定でやってきたつもりだが、時差ぼけがひどく、日本の仕事が相変わらず沢山押し寄せてきているので昼はラボ(で眠くなり)、朝と夜はホテルで眠れなくて日本の仕事と格闘するという相変わらずの海外出張である。しかし、少しは気分を変えようと、今流行りのマイケル・サンデルの「正義」に関する本を成田空港で買い、合間合間に読んでいる。書かれていることは勿論社会正義についてだが、研究者コミュニティと研究費の配分ということに敷衍して考えるのも面白い。我々のように社会の一部を構成し、社会から支援を受けている「サブ社会」の規範は一体何だろうか?もう少し読み進めながら考えてみたい。


(写真)Kingstonの街角。今年は早くも雪景色。Kingstonはかつてはカナダの首都でもあったこともある街で、ヨーロッパ的でclassicalな建物が多い街並みは落ち着いて魅力的。

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 伊佐 正 教授 
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