ご挨拶

2011年1月U   伊佐 正 

昨年から今年にかけて、嬉しかったのは、ここ4−5年にわたってやってきた仕事の論文をいくつかアクセプトに持ち込むことができたことだ。皆、いい雑誌に出したいから、impact factorの高いところに出してはrejectされたりして苦労したものも多いがそれぞれに味わいのある、私としては好きな仕事が多い。(既に研究室を移った人も多いが)筆頭著者の皆との苦労の思い出が詰まっており感慨深い。簡単に紹介すると
Ikeda et al. J Cog Nerosci----盲視サルのボトムアップ的注意。我々にはこれまであまりなかったpsychophysicsの仕事。投稿開始後足かけ2年?
Sooksawate et al. EJN----上丘のGABAergic neuronの形態学的分類。Thongchaiが2003-2004年に滞在した頃に始めた仕事で足かけ7年。2005年にSfNで発表した際に多くの人が注目してくれ、その後いろんな人から「その後、あれはどうなったの?」と「聞かれていた仕事。Thongchaiはタイに帰ってしまうとなかなか研究に時間が割けない。何度か日本と往復しながら完成したので本当によかった。
Yoshino-Saito et al. Neurosci----サルのM1の手指領域から頚髄各髄節への投射を徹底的に定量化した論文。今後の脊髄損傷後の皮質脊髄路の軸索走行の変化を検証する貴重なコントロールデータ。筆頭著者の吉野さんは出産をはさんで頑張りました。
Tsuboi et al. EJN----一次運動野をブロックすると鏡像運動が起こり、反対側の一次運動野を追加してブロックすると、鏡像運動が消失する。この興味深い知見を解析した、鏡像運動の起源に関する実験的論証。筆頭著者の坪井君は大学院修了後、長野の企業に就職したけれど、論文の投稿、改訂にあたっては何度か岡崎まで出てきてくれました。
Takaura et al. JNS----盲視のサルも記憶誘導性サッケードができる。そしてその記憶期間中の持続的活動が上丘で見出されるようになるという興味深い発見。High impact journalに何度かもう少しでいけそうだったのが、やっと出そうです。
Umeda et al. JNP----杏林大学の整形外科から来ていた高橋さんが始め、その後梅田君が引き継いだ仕事。幼弱時に片側の大脳皮質を損傷したラットは成熟後、残った側の皮質で両側の手の動きを制御できるようになる。その経路を電気生理学的に検証した仕事。
Phongphanphanee et al. JNS----Duke大学のBill Hallとの共同研究。Billたちが岡崎に来てくれて実験の大半をこちらでやった。Dukeでは、以前私の研究室にいたFenxia Mizunoさんが実験を担当した。サッケード抑制の基盤となる上丘内の神経回路を詳細に解析した仕事。これまた筆頭著者のPenphimonも投稿と出産が重なってしまったのだが、頑張ってアクセプトに持ち込んだ仕事。
どんな論文でも通していくのは大変なことです。苦労が多かっただけ喜びも大きい。今年も皆で美味しいシャンパンを何度飲めることでしょうか・・・

「ご挨拶2011年1月T」 「ご挨拶2010年12月U」 「ご挨拶2010年12月T」
「ご挨拶2010年11月U」 「ご挨拶2010年11月T」 「ご挨拶2010年10月U」 「ご挨拶2010年10月T」 「ご挨拶2010年9月」
「ご挨拶2010年8月U」 「ご挨拶2010年8月T」 「ご挨拶2010年7月」 「ご挨拶2010年6月」 「ご挨拶2010年5月」
「ご挨拶2010年4月」 「ご挨拶2010年3月」 「ご挨拶2009年12月」 「ご挨拶2009年11月」 「ご挨拶2009年6月」
「ご挨拶2009年3月」 「ご挨拶2009年1月」 「ご挨拶2008年12月U」 「ご挨拶2008年12月T」 「ご挨拶2008年11月」
「ご挨拶2008年9月」 「ご挨拶2008年4月」 「ご挨拶2008年2月」 「ご挨拶2007年12月」 「ご挨拶2007年11月」
「ご挨拶2007年10月」 「ご挨拶2007年8月」 「ご挨拶2007年7月」 「ご挨拶2007年6月」 「ご挨拶2007年4月」
「ご挨拶2007年3月」 「ご挨拶2007年1月」 「ご挨拶2006年4月」 「ご挨拶2006年1月」 「ご挨拶2005年5月」




 伊佐 正 教授 
研究室TOPへ 生理研のホームページへ