Joint Researches

共同利用研究

生体機能イメージング共同利用実験2019年度

生体機能イメージング共同利用実験(2011年度までの磁気共鳴装置共同利用実験と生体磁気測定装置共同利用実験を統合。)

  生理学研究所の大型生体機能イメージング機器は磁気共鳴装置と脳磁場計測装置があり,2011年度まではそれぞれ独立して共同利用実験申請を受け付けて審査していました。しかし,両方の機器を使用する利用者が多いこと,また審査を共通にする方が効率的であることから,2012年度からは両共同利用実験を統合して生体機能イメージング共同利用実験とすることが決定されました。2018年度は、34 件が実施され、2019年度には36件の実施が予定されています。
磁気共鳴装置については「生体内部の非破壊三次元観察」と「生体活動に伴う形態及びエネルギー状態の連続観察(含む脳賦活検査)」というそれぞれ2つの研究テーマを設定し募集しています。現在稼働している最も古い装置は2000年度に導入されたもので,3テスラという高い静磁場により通常の装置(1.5テスラ)に比較して2倍の感度をもち,特に脳血流計測による脳賦活実験においては圧倒的に有利です。また,特別な仕様を施してサルを用いた脳賦活実験をも遂行できるようにした点が,他施設にない特色です。さらに,実験計画,画像データ収集ならびに画像統計処理にいたる一連の手法を体系的に整備してあり,単に画像撮影装置を共同利用するにとどまらない,質の高い研究を共同で遂行できる環境を整えて,研究者コミュニティのニーズに応えようとして来ました。さらに,2010年度には2台を連動させ,コミュニケーション時の脳活動を計測が可能なdual systemを導入し,社会脳の研究への大きな貢献とともに新たな研究分野の開拓が期待されています。2014年度には,ヒト用の7テスラという極めて高い磁場を持つ磁気共鳴装置が導入され,2015年度稼働開始しました。2017年度は、撮像と画像処理に関する技術的検討・開発のための共同利用実験に供することとなり、2 件を、2018年度は5件を採択しました。2018年度に安定な稼働が確実となったため,今後広く共同利用実験全般に供します。
生理学研究所は1991年度に37チャンネルの大型脳磁場計測装置(脳磁計)が日本で初めて導入されて以後,日本における脳磁図研究のパイオニアとして,質量共に日本を代表する研究施設として世界的な業績をあげてきました。同時に,大学共同利用機関として,脳磁計が導入されていない多くの大学の研究者が生理学研究所の脳磁計を用いて共同利用研究を行ない,多くの成果をあげてきました。現在,脳磁計を共同利用機器として供用している施設は,日本では生理学研究所のみです。2002年度には基礎脳科学研究用に特化した全頭型脳磁計を新たに導入し,臨床検査を主業務として使用されている他大学の脳磁計では行ない得ない高レベルの基礎研究を行なっています。脳磁計を用いた共同利用研究としては「判断,記憶,学習などの高次脳機能発現機序」「感覚機能及び随意運動機能の脳磁場発現機序」という2つの研究テーマを設定し募集しています。また今後は,他の非侵襲的検査手法である,機能的磁気共鳴画像(fMRI),経頭蓋磁気刺激 (TMS),近赤外線スペクトロスコピー(NIRS)との併用をいかに行なっていくが重要な問題になると思われます。
 

(1)磁気共鳴装置 (MRI)
   ①生体内部の非破壊三次元観察
   ②生体活動に伴う形態及びエネルギー状態の連続観察(含む脳賦活検査)
(2)生体磁気計測装置 (MEG)
   ①判断、記憶、学習などの高次脳機能発現機序
   ②感覚機能及び随意運動機能の脳磁場発現機序

2019年度採課題一覧

区分 研究課題名 代表者氏名 使用機器
1 非ヒト霊長類を用いた安静時脳機能結合パターンの操作と理解 南本 敬史
(量子科学技術研究開発機構・放射線医学総合研究所)
MRI
2 共同運動課題時の複数名同時脳活動計測:コミュニケーション形成の神経的基盤を探る 阿部 匡樹
(北海道大学・大学院教育学研究院)
MRI
3 経頭蓋電気刺激による聴覚誘発脳磁界の変調 岡本 秀彦
(国際医療福祉大学・医学部)
MEG
4 dual-fMRIを用いた社会的交流における受容行動の神経基盤 荻野 祐一
(群馬大学・医学部附属病院)
MRI
5 社会的報酬および罰が運動パフォーマンスに及ぼす影響の神経機構の解明 中山 義久
(東京都医学総合研究所・脳機能再建プロジェクト)
MRI
6 曖昧視知覚の不安定化をもたらす脳内情報処理の解明 浦川 智和
(東京理科大学・理学部)
MEG
7 語用論的解釈の神経基盤 ― 発話における意図的不調和の処理過程に着目して 松井 智子
(東京学芸大学・国際教育センター)
MRI
8 MEGを利用した聴覚時空間的脳活動の検討 田中 慶太
(東京電機大学・理工学部)
MEG
9 多義性効果と意味密度効果の脳波・脳磁場計測を用いた検証 日野 泰志
(早稲田大学・文学学術院)
MEG,EEG
10 ぬれ感覚の脳内形成機序の探索 永島 計
(早稲田大学・人間科学学術院)
MRI
11 役割分担を伴う協調行動時の2者間に見られる脳活動ダイナミクスの解析 高橋 宗良
(玉川大学・脳科学研究所)
MRI
12 脳磁図による運動視知覚の神経基盤の解明 今井 章
(信州大学・学術研究院人文科学系)
MEG
13 脳磁図を用いた片側良聴耳患者における周波数特異性の研究 関谷 健一
(名古屋市立大学・医学部)
MEG
14 末梢神経線維の選択刺激法の確立と脳反応の計測 和坂 俊昭
(名古屋工業大学・大学院工学研究科)
MRI
15 各種刺激による顔認知メカニズムの変容 三木 研作
(日本赤十字豊田看護大学・)
MEG
16 感覚情報処理抑制系の機序解明と検査パラダイムの確立 乾 幸二
(愛知県心身障害者コロニー・発達障害研究所)
MEG,EEG
17 磁気共鳴画像を用いた、日本人英語学習者・外国人日本語学習者の第二言語習得メカニズムの探求 笠井 千勢
(岐阜大学・地域科学部)
MRI
18 聴覚後期活動と音源定位-音源の位置と移動方向に着目して 元村 英史
(三重大学・医学部附属病院)
MEG,EEG
19 7T fMRIを用いた協力の神経基盤としての右頭頂側頭接合部の役割の解明 高橋 英彦
(京都大学・大学院医学研究科)
MRI
20 脊髄損傷後の非ヒト霊長類の中枢回路の大規模再編過程の7TMRIによる解析 伊佐 正
(京都大学・大学院医学研究科)
MRI
21 脳波・機能的MRI同時計測法を用いた睡眠覚醒機構の解明 麻生 俊彦
(京都大学・医学部附属病院)
MRI,EEG
22 呼吸誘発性脳血流変化による体性感覚認知への影響 中田 大貴
(奈良女子大学・研究院生活環境科学系)
MEG
23 意図的な立毛生成の神経基盤および情動機能との相互作用の解明 片平 建史
(関西学院大学・大学院理工学研究科)
MRI
24 知覚・記憶・注意とその相互作用に関する脳磁場信号の計測 野口 泰基
(神戸大学・大学院人文学研究科)
MEG
25 時間、空間、音声の知覚に共通するチャンネル間処理の解明 森 周司
(九州大学・大学院システム情報科学研究院)
MEG
26 7テスラMRI装置における8チャネル並列送信技術の開発とこれを利用したヒト連合野の機能構築研究 田中 啓治
(理化学研究所・脳神経科学研究センター)
MRI
27 MRIを用いた大脳基底核新経路の検証 吉田 篤司
(理化学研究所・生命機能科学研究センター)
MRI
28 3次元シネ位相コントラスト磁気共鳴法の基礎的検討 礒田 治夫
(名古屋大学・脳とこころの研究センター)
MRI
29 眼球運動の機能的ネットワークの解析 三浦 健一郎
(京都大学・大学院医学研究科)
MRI
30 神経アミノ酸マッピングのための化学シフトイメージングの確立 梅田 雅宏
(明治国際医療大学・医学教育研究センター)
MRI
31 呼吸による認知パフォーマンスと関連する脳活動の解明 中村 望
(兵庫医科大学・大学院医学研究科)
MRI
32 7テスラMRIによるヒト第一次体性感覚野の皮質内回路機構の解明 楊 家家
(岡山大学・大学院自然科学研究科)
MRI
33 意味の創発に関わる内的表象形成メカニズムの解明 寺井 あすか
(公立はこだて未来大学・システム情報科学部)
MRI
34 直接消費可能な遅延報酬を用いた意思決定に関わる認知制御機構 地村 弘二
(慶應義塾大学・理工学部)
MRI
35 経済実験と非侵襲脳活動イメージングによる言語が社会効用に与える影響の解明 山田 克宣
(近畿大学・経済学部)
MRI

過去の採択一覧・成果

■ 磁気共鳴装置 共同利用実験
(2011年度まで)

■ 生体磁気計測装置 共同利用実験
(2011年度まで)