Joint Researches

共同利用研究

生体機能イメージング共同利用実験 2020年度

生体機能イメージング共同利用実験(2011年度までの磁気共鳴装置共同利用実験と生体磁気測定装置共同利用実験を統合。)

  生理学研究所の大型生体機能イメージング機器は磁気共鳴装置と脳磁場計測装置があり,2011年度まではそれぞれ独立して共同利用実験申請を受け付けて審査していました。しかし,両方の機器を使用する利用者が多いこと,また審査を共通にする方が効率的であることから,2012年度からは両共同利用実験を統合して生体機能イメージング共同利用実験とすることが決定されました。2019年度は、36 件が実施され、2020年度には38件の実施が予定されています。
 磁気共鳴装置については「生体内部の非破壊三次元観察」と「生体活動に伴う形態及びエネルギー状態の連続観察(含む脳賦活検査)」というそれぞれ2つの研究テーマを設定し募集しています。現在稼働している最も古い装置は2000年度に導入されたもので,3テスラという高い静磁場により通常の装置(1.5テスラ)に比較して2倍の感度をもち,特に脳血流計測による脳賦活実験においては圧倒的に有利です。また,特別な仕様を施してサルを用いた脳賦活実験をも遂行できるようにした点が,他施設にない特色です。さらに,実験計画,画像データ収集ならびに画像統計処理にいたる一連の手法を体系的に整備してあり,単に画像撮影装置を共同利用するにとどまらない,質の高い研究を共同で遂行できる環境を整えて,研究者コミュニティのニーズに応えようとして来ました。さらに,2010年度には2台を連動させ,コミュニケーション時の脳活動を計測が可能なdual systemを導入し,社会脳の研究への大きな貢献とともに新たな研究分野の開拓が期待されています。2014年度には,ヒト用の7テスラという極めて高い磁場を持つ磁気共鳴装置が導入され,2015年度稼働開始しました。2017年度は、撮像と画像処理に関する技術的検討・開発のための共同利用実験に供することとなり、2 件を、2018年度は5件を採択しました。2018年度に安定な稼働が確実となったため,今後広く共同利用実験全般に供しています。
 生理学研究所は1991年度に37チャンネルの大型脳磁場計測装置(脳磁計)が日本で初めて導入されて以後,日本における脳磁図研究のパイオニアとして,質量共に日本を代表する研究施設として世界的な業績をあげてきました。同時に,大学共同利用機関として,脳磁計が導入されていない多くの大学の研究者が生理学研究所の脳磁計を用いて共同利用研究を行ない,多くの成果をあげてきました。現在,脳磁計を共同利用機器として供用している施設は,日本では生理学研究所のみです。2002年度には基礎脳科学研究用に特化した全頭型脳磁計を新たに導入し,臨床検査を主業務として使用されている他大学の脳磁計では行ない得ない高レベルの基礎研究を行なっています。脳磁計を用いた共同利用研究としては「判断,記憶,学習などの高次脳機能発現機序」「感覚機能及び随意運動機能の脳磁場発現機序」という2つの研究テーマを設定し募集しています。また今後は,他の非侵襲的検査手法である,機能的磁気共鳴画像(fMRI),経頭蓋磁気刺激 (TMS),近赤外線スペクトロスコピー(NIRS)との併用をいかに行なっていくが重要な問題になると思われます。

 

(1)磁気共鳴装置 (MRI)
   ①生体内部の非破壊三次元観察
   ②生体活動に伴う形態及びエネルギー状態の連続観察(含む脳賦活検査)
(2)生体磁気計測装置 (MEG)
   ①判断、記憶、学習などの高次脳機能発現機序
   ②感覚機能及び随意運動機能の脳磁場発現機序

2020年度採課題一覧

区分 研究課題名 代表者氏名 使用機器
1 非ヒト霊長類を用いた安静時脳機能結合パターンの操作と理解 南本 敬史
(量子科学技術研究開発機構・放射線医学総合研究所)
MRI
2 マカクザルの構造画像撮影 鯉田 孝和
(豊橋技術科学大学・エレクトロニクス先端融合研究所)
MRI
3 共同運動課題時の複数名同時脳活動計測:コミュニケーション形成の神経的基盤を探る 阿部 匡樹
(北海道大学・教育学研究院)
MRI
4 dual-fMRIを用いた社会的交流における受容行動の神経基盤 荻野 祐一
(群馬大学・医学部附属病院)
MRI
5 拡散強調MRIを用いたマカクザル神経線維結合の検討 菅原 翔
(東京都医学総合研究所・脳機能再建プロジェクト)
MRI
6 意欲-運動連関を支える神経機構の解明 中山 義久
(東京都医学総合研究所・脳機能再建プロジェクト)
MRI
7 ぬれ感覚の脳内形成機序の探索 永島 計
(早稲田大学・人間科学学術院)
MRI
8 バーチャルエージェントによる表情模倣成立の効果に関する神経生理学的解明 佐藤 大樹
(芝浦工業大学・システム理工学部)
MRI
9 語用論的解釈の神経基盤 ― 認知要素と情動要素の協働機制の探索 中村 太戯留
(武蔵野大学・データサイエンス学部)
MRI
10 感覚情報処理抑制系の機序解明と検査パラダイムの確立 乾 幸二
(愛知県心身障害者コロニー発達障害研究所・機能発達学部)
MEG,EEG
11 運動イメージの脳内表象の解明 水口 暢章
(国立長寿医療研究センター・健康長寿支援ロボットセンター)
MRI
12 磁気共鳴画像を用いた、日本人英語学習者・外国人日本語学習者の第二言語習得メカニズムの探求 笠井 千勢
(岐阜大学・地域科学部)
MRI
13 脊髄損傷後の非ヒト霊長類の中枢回路の大規模再編過程の7TMRIによる解析 伊佐 正
(京都大学・大学院医学研究科)
MRI
14 脳波・機能的MRI同時計測法を用いた睡眠覚醒機構の解明 石井 徹
(京都大学・医学研究科附属脳機能総合研究センター)
MRI,EEG
15 意図的な立毛生成の神経基盤および情動機能との相互作用の解明 片平 建史
(関西学院大学・大学院理工学研究科)
MRI
16 経頭蓋電気刺激による聴覚誘発脳磁界の変調 岡本 秀彦
(国際医療福祉大学・医学部)
MEG,EEG
17 Gapにより惹起される聴覚誘発脳磁界反応 岡本 秀彦
(国際医療福祉大学・医学部)
MEG
18 MEGを利用した聴覚時空間的脳活動の検討 田中 慶太
(東京電機大学・理工学部)
MEG
19 曖昧視知覚の不安定化をもたらす脳内情報処理の解明 浦川 智和
(東京理科大学・理学部第一部)
MEG
20 多義性効果と意味密度効果の脳波・脳磁場計測を用いた検証 日野 泰志
(早稲田大学・文学学術院)
MEG,EEG
21 脳磁図を用いた運動知覚の神経基盤の解明 今井 章
(信州大学・学術研究院人文科学系)
MEG
22 末梢神経線維の選択刺激法の確立と脳反応の計測 和坂 俊昭
(名古屋工業大学・電気・機械工学科)
MRI,MEG,EEG
23 脳磁図を用いた片側良聴耳患者における周波数特異性の研究 関谷 健一
(名古屋市立大学・大学院医学研究科)
MEG
24 変化応答としての聴覚後期活動と聴性定常反応の位相変化 元村 英史
(三重大学・医学部附属病院)
MEG,EEG
25 知覚・記憶・注意とその相互作用に関する脳磁場信号の計測 野口 泰基
(神戸大学・大学院人文学研究科)
MEG
26 副交感神経系の変動特性の安静時脳ネットワークへの影響評価 成 烈完 
(東北福祉大学・感性福祉研究所)
MRI
27 7テスラMRI装置における8チャネル並列送信技術の開発とこれを利用したヒト連合野の機能構築研究 田中啓治
(理化学研究所・脳神経科学研究センター)
MRI
28 大脳言語野皮質の層特異的活動の計測 幕内 充
(国立障害者リハビリテーションセンター研究所・脳機能系障害研究部)
MRI
29 超高磁場機能的磁気共鳴画像法を用いたヒト脳活動の高分解能計測および解析法の研究 宮脇 陽一
(電気通信大学・大学院情報理工学研究科)
MRI
30 眼球運動の機能的ネットワークの解析 三浦 健一郎
(国立精神・神経医療研究センター・精神保健研究所 精神疾患病態研究部)
MRI
31 7T MR装置を用いた血管壁イメージングによる脳血管壁性状と3次元シネ位相コントラスト磁気共鳴法による脳血管血流動態の検討 礒田 治夫
(名古屋大学・脳とこころの研究センター)
MRI
32 神経アミノ酸マッピングのための化学シフトイメージングの確立 梅田 雅宏
(明治国際医療大学・医学教育研究センター)
MRI
33 呼吸活動が及ぼす認知パフォーマンス関連の脳活動の解明 中村 望
(兵庫医科大学・大学院医学研究科)
MRI
34 7テスラMRIによるヒト第一次体性感覚野の皮質内回路機構の解明 楊 家家
(岡山大学・大学院ヘルスシステム統合科学研究科)
MRI
35 fMRIにおける外側後頭皮質のより特異的なfunctional localizerの探索 内山 博之
(鹿児島大学・学術研究院理工学域工学系)
MRI
36 意味の創発に関わる内的表象形成メカニズムの解明 寺井 あすか
(公立はこだて未来大学・システム情報科学部)
MRI
37 将来の報酬を期待するヒト脳の価値表象の動的特徴と選択形成の解析 地村 弘二
(慶應義塾大学・理工学部生命情報学科)
MRI
38 機械学習とfMRIを用いた抒情の生じるメカニズムの解明 磯 暁
(素粒子原子核研究所・理論センター)
MRI

過去の採択一覧・成果

■ 磁気共鳴装置 共同利用実験
(2011年度まで)

■ 生体磁気計測装置 共同利用実験
(2011年度まで)