ご挨拶

2013年1月   伊佐 正 

                                          年の初めに

年末は、昨年を振り返って少し暗い気持ちで「ご挨拶」を書きましたが、年も明けたので、少し気分を改めたいと思います。そこで今年の目標、抱負を少し。
研究では、まずは、昨年論文にしたウィルスベクター2重感染による経路選択的・可逆的神経伝達遮断法を方法論としてより確立したい。ひとつには、脳・脊髄損傷後の代償経路の特定に活用したい。脳は大変redundantなので、一つの経路をつぶしても明確に症状が見えにくい場合も少なくない。それが損傷後、その経路に強く依存している状況でそれをつぶすと大変症状が見えやすいだろうという考え。これにはまずは安全走行という意味もある。また、この手法は脳幹や脊髄、大脳基底核などの比較的機能が特定の小さい領域に集約されている場合に力を発揮する可能性が高い。一方で大脳皮質に使えるとさらに有用であるが、そのためにはウィルスの血清型をはじめ、様々な工夫が必要と考えており、そのための方法論の改善を確実に進めて行きたい。さらに破傷風毒素以外の様々なタンパク(オプシン類も含む)と入れ替えて、様々な種類の機能操作を行えるようにしたい。
また、研究室内では西村准教授を中心とするグループで新しいBMIのコンセプトとしての「人工神経接続」を様々な状況に適用する研究が大変な勢いで進んでいる。2013年は「人工神経接続」がキーワードになるような年にしたい。
また、もう一つのキーワードは「ECoGの多チャンネル化」。ここ数年やってみて「ECoGは使える!」という強い確信を持つにいたった。今後はECoG(と、できればfMRI/PETの併用)による脳全体の記録+ウィルスベクター(光遺伝学も含む)による局所の操作=認知機能の解明+損傷後機能回復過程の理解、という方程式を確立したい。そのためには技術的革新もそうだが、「大規模な計算」を実現するための共同研究体制の構築がカギとなるので、その部分でももう少し頑張りたい。
このように古い神経生理学の伝統は大切にしながらも、研究手法とコンセプトについては、少し背伸びをしながらも貪欲に新しいもの、まだ存在していないものを作っていきたいと思う。
あと個人的には、「仕事の作法」を改善したい。どうも自分で仕事を抱え込みがち。やはり、仕事が降ってきた際に、なるべく早い段階でその中身、分量、期日をきちんと把握し、誰かと手分けをするのであれば、その仕切りを早めに行うということを習慣にしたい。これまで期日間際になってやっと内容を把握し、本当は誰かに頼めばよかったことも自分で抱えてしまって、大変焦る、期日に間に合わないという事も少なくなかった。そういう自分を何とか克服したい。
管理業務的なことは少々無理をしてでも平日に済ませ、週末に持ち越さない。週末は集中して考える、勉強する、論文を書く、手を動かして実験(手術)をする、気分転換をして遊ぶ、家事をする・・・というメリハリをつけたい。
ここ数年、膨大な仕事量、出張日数に対して何とか仕事を減らしたい、と考えてきたが、やはり断ることは容易ではない。その代わりに仕切りを良くする。頼める者は人に頼む(その代り押えるべきところは押える)。自分が集中できる時間を作る、ということで対処したいと。
何をいまさら・・・と思われるかもしれないが、こういう基本的な「仕事の作法」がなかなかできてこなかった。今年は53歳。60歳定年であった昔ならそろそろゴールが見え始める頃。やはり時間を大切にしたい。


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 伊佐 正 教授 
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