ご挨拶

2013年4月   伊佐 正 

                                    1−3月、そして新年度

4月。新年度が始まった。更新が遅れたが、年が明けて以降のイベントをいくつか・・・
1月21日 東京市ヶ谷JST。さきがけ「脳情報の解読と制御」の第2期生終了報告会。今回のトークは、さきがけ研究員の皆さんに加えて領域アドバイザーから笹井先生、入来先生に私。あと途中で最先端・次世代に移った池谷さんも講演。笹井先生は最新のNatureのreviewの内容を中心に”Emergence Biology”を大きく打ち出すお話し。さすがに「乗ってる」感じ。研究の内容、プレゼンともにうならせる内容だった。一方、私は、これまで散々さきがけ研究員の皆さんから「研究の提案」を受ける立場だったので、いつもの普通の研究内容ではなく、来し方行く末を展望して私なりの研究提案をさせてもらった。
2月2日。脳プロの公開シンポジウム。課題A,Cが終わるのでその最終報告会。立花隆さんに総合討論の司会をお願いしたこともあってか、500名の事前登録は開催数日前にはもう締切り。当日も学術情報センターは満員。別室で多くの方がテレビスクリーンで見ているくらいの盛況だった。テーマは「基礎 日本発、世界へ」。確かに脳プロA,Cは誰が何と言おうと、多くの世界に誇れる新しい成果を日本から世界に発信できた。川人先生のdecoded neurofeedback。里宇先生のBMIリハビリテーション。岡野/佐々木先生の遺伝子改変マーモセット、そして私たち(小林/渡邉/伊佐)のウィルスベクター2重感染法による霊長類での経路選択的・可逆的神経伝達遮断。私自身は川人先生や岡野先生と同じような発表スタイルはなかなかできないけれど、私なりにやることはやったという気分で、感慨深かった。
2月5−7日は第一回の自然科学研究機構の「NINS Colloquium」in 箱根。佐藤機構長の呼びかけで、箱根で3日間缶詰めでの異分野交流。自然科学の将来像に関わる哲学、分子システム、生命システム、脳の中の時間、太陽地球環境と天文学、材料など様々なテーマについて、機構外の先生方も含めて話題提供とブレインストーム。さすがに一味違う参加者のラインアップで、年度末のこの忙しいときに・・・とは思いつつも参加して良かった。初めて天文台や核融合研究所の人たちと近しくなれた。
2月15日。実験動物中央研究所の野村達次所長のお別れの会に参列した。野村先生は戦後の日本の動物実験の基盤を整備し、世界水準にしなくてはという強い意志を持たれ、著書にあるように文字通り「6匹のマウス」から世界の実中研を立ち上げられた。私はニホンザルバイオリソースを始めた頃、「何でいまさらニホンザルなのか?」と言われて呼び出されて考えを問われたあたりからお知り合いにならせていただいたが、一旦こちらの意思が伝わると温かく接してくださった。お亡くなりになる前の最後の言葉(絶叫されたそうだが)が「妥協するな」「人のまねをするな」「世界的な仕事をせよ」の3つであったとのこと。本当にその通りの人生を生きられたと思う。合掌。
3月1日。自然科学研究機構の若手分野間融合プロジェクトの成果報告会@国立天文台(三鷹)。自然科学研究機構では、自然科学の様々な分野にまたがる研究所があり、普段はお互い遠いと思っている者同士を繋いて新しい科学を創出しようと、佐藤機構長が音頭をとって、複数の研究所をまたがるプロジェクトを若手が提案し、1年間研究費を支給して自由に研究していただこうという制度がある。天文台+核融合、ないしは基生研+生理研という枠組みはある程度想像がつくが、生物系と物理系の融合はなかなか難しい。しかし、今回、いくつかそのような研究の芽が見れたのはとても楽しかった。NINS Colloquiumの時のそうだったが、やはり元気の良い若手を見ているとこちらも元気が出る。ただ、元気が良いメンツがいつも限られているのが、もうちょっと何とかならないものか思う。
3月8−9日は阪大蛋白研セミナー。大阪バイオサイエンス研究所から昨年蛋白研に異動された古川先生と理研QBicの岡田先生がオーガナイザー。普段と違うコミュニティの、私より少し若い人たちの勢いのある話を聞いて勉強ができた。いつものシステム神経科学の会合とは違うスピード感が良い刺激になった。
3月15―16日は以前から懸案になっていた富山大システム情動科学(西条研)との合同リトリート。我々は毎年2−3月に研究室で合宿して1年間の研究成果を各自がプレゼンして徹底討論することをしてきたが、以前から、西条先生から一度一緒に合宿してバトルロワイヤルをしようと声をかけていただいていたのを実現できた。場所は富山湾に面する氷見の浜辺の民宿。独自に掘った温泉、魚料理が抜群。少し違うが多くの興味を共有している研究室同士の交流は、その後の飲み会も含めて大変有意義だった。この時期には珍しいとても良い天気で、富山湾越しに立山連邦が見えたのは最高だった(写真はこちら)。
3月19−20日。機構の新分野創成センターのブレインサイエンス分野の公募プロジェクトの成果報告会と「認知ゲノミクス」に関するブレインストーミング。最近までまだ雲をつかむようだった霊長類の認知ゲノミクスがゲノム科学、神経科学、精神医学、発生工学の研究者の連携で現実のものになりつつある「ワクワク感」ができてきた。この2年くらいでどこまで一気に立ち上がるかが見所です。
3月21−22日は生理研の多次元共同脳科学推進センターの新体制のキックオフ会議。川人先生、銅谷先生、森郁恵先生、酒井邦嘉先生、大木研一先生、西田眞也先生、宮田卓樹先生などそうそうたるメンバーが吉田明さんの音頭取りで神経科学の将来を語り合うという贅沢なプログラム。年度末のお忙しいときに大変有難うございました。

・・・という行事に加えて様々な報告書、年度末のシメの会議など、慌ただしい年度末を潜り抜けて今日は4月1日。いつも4月1日になると青空が晴れ渡ったような気分になる。今年はまだ昨年末からの色々を少々引き摺ってはいるが、例年通りの晴れやかな気分。正規の職を得て異動した人、新規の加入者(NEWSを参照)。ギアチェンジをして新しいスタートを切りたいと思う。



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 伊佐 正 教授 
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